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AHPコンピテンシーコラム第一話

  • 靖 伊藤
  • 2023年2月22日
  • 読了時間: 12分


今回からは、以前に掲載したコラムの中からコンピテンシーに絡むものを再整理して、日頃の生活におけるコンピテンシー事例についてお話ししていきたいと思います。

まず、私がコンピテンシーと出会ったのは、今から24年前、まだ、情報通信ベンチャーにいた頃に、外資系医薬品会社から転職のお話を戴いた時でした。

それまで人を見る基準について、悩んでいた私にとって、コンピテンシーはまさに天からの恵みともいうべきもので、その後、外資系医薬品会社、そして、独立してのコンサルティングにおいて、コンピテンシーの使い方を研究しながら、活用して参りました

私はコンピテンシーマネジメントを活用した人事を、戦略的人財マネジメントと呼んでいます。これは、人事はそれが独立して成り立つものではなく、全て戦略に立脚するものであり、人事異動、採用、人財育成は、戦略の実現を達成するためのものであるからです。

経営ビジョンに基づいて策定された中長期経営計画を達成するために形成された組織には、そこに課せられた成果を達成する責任(成果責任)があり、組織を形成する要員にはその成果を達成するために必要な要件が存在します。この要件を見極める基準として、「人間性」、「知識・技能」、「コンピテンシー」の3つの視点が重要になります。

この3つの視点のうち、「人間性」と「知識・技能」については、以前から、人を見る(選ぶ、評価する)視点として、捉えられており、皆さんもよくご存知の視点で、従来から、人を採用したり、育成したりするときに、この2つの視点に重点が置かれてきました。ところが、人が良くて物を良く知っている(頭が良い)だけで、本当に成果を上げることができるのでしょうか?学校時代に成績が良かった人が、必ずしも仕事ができるわけではありません。

そこで、3つ目の視点として「コンピテンシー」を取り上げたいと思います。「コンピテンシー」は「行動特性」、「顕在能力」、「発揮能力」ともいわれ、「自らの職務において高い成果を生み出すために、安定的に、行動として発揮できた能力」で、仕事において必然的に結果を出している能力です。「コンピテンシー」は次の要件が必要になります。

1.ただ持っているだけではなく、行動に現れていること。

2.ただ漫然として発揮しているのではなく成果に現れていること

3.偶々できたのではなく、常にできていること

次回からは、コンピテンシーを用いるコンピテンシーマネジメントの構築や運用について、身近な例や実例を交えながら、お話をしていきたいと思います。

AHPコンピテンシーコラム第二話

 コンピテンシーマネジメントはコンピテンシーという概念の活用によって人材を人財に変え、経営ビジョンを実現していく事です。このコンピテンシーマネジメントに欠かせないのが、コンピテンシーディクショナリー、コンピテンシーモデル、コンピテンシー測定で、私はこれをコンピテンシーマネジメントの3種の神器と呼んでいます。

 戦略的人財マネジメントにおいては、まず、戦略達成に必要な職務の役割と責任の明確化を行うと共に、戦略達成に必要とされる組織全体の能力基準の明確化を行います。そして、明確化された役割と責任を全うするために必要な職務毎の能力(職務要件)の明確化を行い、個人の能力と職務要件とのギャップの確認の順に進めていきます。これをコンピテンシーマネジメントと照合すると、「能力基準の明確化」が「コンピテンシーディクショナリーの策定」、「役割と責任を全うできる能力の明確化」が「コンピテンシーモデルの策定」、「個人の能力と職務要件とのギャップの確認」が「コンピテンシー測定」となります。これは、最近で各社で行われているスキルマップの作成のベースとなります。スキルマップの作成においても、最終的にその職務に必要な知識・ノウハウを特定しますが、知識・ノウハウを有効にするためにはコンピテンシーが必要になります。

 それでは、コンピテンシーマネジメントの3種の神器を説明していきましょう。

 まず、コンピテンシーディクショナリーは、業績をあげている人々のコンピテンシーを多数抽出して、心理学的な分析を施して有効と思われるものを分類してリスト化したもので、コンピテンシーの定義と各々のレベルの内容を記述したものです。従来、能力基準は能力の定義はあってもそれを測る場合、5段階評価で、「大変よい」「よい」「普通」「よくない」「大変よくない」といった評価をしていたことが多く、これは評価する人によって、「普通」の基準が異なることがあるため、自分が得意な分野では、他人に対して厳しい評価をしてしまう「厳格化傾向」が出たり、逆に弱い分野では評価が甘くなる「寛大化傾向」が出たりしていました。しかし、コンピテンシーディクショナリーには、明確な定義と各々の水準について、詳しく記されており、「厳格化傾向」や「寛大化傾向」が抑えられます。

 次に、コンピテンシーモデルは業務において常に高業績をあげている人をベンチマークとして設定し、高業績者たる要因を徹底分析し、これをモデル化したものです。これは、従来の「職務遂行能力」というような一般的・恒久的な能力モデルではなく、事業戦略が反映されたモデルで、職務に期待される成果は会社の戦略に応じて異なります。よって、他社のコンピテンシーモデルをそのまま自社に適用してもその人物が成果を上げて自社に貢献するとは限りません。

 最後に、コンピテンシー測定は、測定の対象者が業務において成果を上げる為に行ってきた行動を「どのように考え(Why)、どのように行動したか(How)」を詳細に訊くことにより、対象者が取った行動と思考のイメージを共有し、それを可能にしているコンピテンシーとレベルを明確にすることです。これにより測定されたコンピテンシーとコンピテンシーモデルで求められているコンピテンシーとそのレベルを比較して、ギャップを明確にすることを目的としています。

次回は3種の神器について更に詳しくお話します。

AHPコンピテンシーコラム第三話

今回はコンピテンショーディクショナリーについて詳しくお話をします。

コンピテンシーディクショナリーは、第二話でも述べましたように、業績をあげている人々のコンピテンシーを多数抽出して、心理学的な分析を施して有効と思われるものを分類してリスト化したもので、コンピテンシーの定義と各々のレベルの内容を記述したものです。そのうち、主要なものを幾つか挙げますと、達成志向力、対人影響力、対人理解力、顧客志向力、情報探求力、リーダーシップなどで、これらに定義とレベル毎に記述があります。

顧客志向力を例にとって、定義と各レベルの記述を挙げてみましょう。

定義は『直接に顧客に接し、顧客が求めているものを、敏感に且つ正確に把握し、対応していく能力』です。

次に、レベル1は、『顧客からの直接、要求されたことに対しては対応しているが、自主的に顧客満足につながるようなことを察知したり、研究したり、対応することはない』です。

レベル2は、『自ら、顧客の満足度や要求を常にモニターし、不満な点については、顧客からその理由を聞き出し、対応している』です。

レベル3は、『顧客の言葉だけでなく、様子や雰囲気から、相手が求めているものや不満な点を敏感に察知し、対応している』です。

レベル4は、『直接多くの顧客に接することで顧客ニーズの一般的な変化や兆候を敏感に感じ取り、その変化や兆候への対応を継続的に考案し自ら実行している』です

最後に、レベル5は、『今まで存在しなかった市場のニーズを自ら創造するような商品やサービスのあり方を考案し、自ら実行している』です。

顧客志向力のコンピテンシーはスーパーや居酒屋の店員さんの行動が比較的にわかりやすい事例になると思います。

私が以前、訪れた居酒屋では、店に入ってビールが出てくるまでに5分以上掛かり、その後の追加も何度も催促しなければなりませんでした。また、料理も食べ終わって、次の料理を待っていても、なかなか来ないのでやはり催促をしなければならなかったのです。これはレベル1にも満たないレベルといわざるを得ません。その店は大阪の繁華街にあるにも拘わらず、2人で2時間滞在して一人当たり単価2千円くらいでした。これは料理やお酒の価格が安いというわけではありません。顧客をよくモニターせず、ビールや料理を持ってくるテンポが悪かったために、客単価を大きく下げてしまったのです。

このような事例は、時々見られるのではないでしょうか?

次回もこの続きをお話したいと思います。

AHPコンピテンシーコラム第4話

今回は達成志向力のコンピテンシーについてお話しします。

達成志向力は、「自分自身や組織全体のチャレンジングな目標を、自ら設定し、それを達成するまであらゆる手段を駆使して取り組み、目標を達成しても更に高いレベルを狙うなど、常に高い成果を生み出そうとする能力」と定義しています。

達成志向力のポイントは①チャレンジングなゴールの自己設定、②達成するまでの様々な取組、③あきらめないこと、そして、④達成した後、更に高いゴールを設定する、ことにあります。

また、これらのレベルの事例を1から順に5まで並べると、次のようになります。

レベル1は、『与えられた目標の達成に向けて努力している』です。

レベル2は、『自分の達成目標を自分で正確に理解し、その達成に向けて努力している』

レベル3は、『自分の目標の達成のためには、いかなる困難があっても諦めることなく、あらゆる手段を駆使して達成に向けて取り組んでいる』です。

レベル4は、『常にチャレンジングで且つ現実的な目標を設定し、いかなる困難があっても諦めることなく、あらゆる手段を駆使して達成に向けて取り組んでいる』です。

レベル5は、『全社の業績成果の向上のため、チャレンジングで且つ現実的な目標を設定し、自分の目標のみならず、その全ての達成のためにいかなる困難があっても諦めることなく、あらゆる手段を駆使しながら取り組んでいる』です。

例えば、新入社員が入社したときに、上司から与えられた目標に向かって無我夢中で努力するレベルは1です。レベル3になると、上司の目標を理解した上で、自分の目標を設定し、困難にぶつかっても、あの手この手を打って、粘り強く達成に向けて取り組んでいきます。この際、資源として上司や先輩、或いは周りの人たちを活用することも重要な要素となります。

色々な経営者や経営幹部とお話しすると、やはり、管理職にはレベル4を求めたいということが聞かれます。レベルの設定に際しては、は今できるレベルを設定するのではなく、会社が躍進するために必要なチャレンジングなレベルを設定します。チャレンジングなレベルというのはそれを達成するためにあらゆる手段を講じているレベルです。

以前、ハワイで起こった飛行機事故で、機体の屋根を吹き飛ばされながら、ほぼ全員を乗せて近隣の空港に生還した機長の話がテレビで放映されました。

この機長は事故発生から20分弱の間に様々な厳しい判断をしました。まず、乗員が呼吸を正常にできるようにするために、高度7000メーターから高度3000メーターに高度を下げなければなりませんでしたが、このとき、マニュアル通りの下降速度では機体が空中分解することを予測し、自らの経験に基づき、ぎりぎりの下降速度を瞬時に割り出してそれを実行に移しました。また、着陸に際しては、寸前になって片側のエンジンが停止したため、両翼にあるブレードをマニュアル通りの角度にして減速すると、もし一回で着陸不能な場合に再び上昇できない可能性があると判断し、ブレードの角度をより緩やかにすることで、速度を緩めずに着陸体勢に入り、着陸寸前に通常とは逆に逆噴射の出力を増して滑走路ぎりぎり一杯での着陸に成功したのです。マニュアルは平常時を想定して作られていますが、緊急時にはそれに加えて考慮すべき様々な点があり、彼はそれを全て勘案して無事生還を果たしたのです。

 このときに彼は様々な知識やノウハウを活用し、様々なコンピテンシーを発揮していますが、ベースとなったコンピテンシーは、今、飛行機に乗っている全員を無事に連れて帰るというチャレンジングな目標に向けて、最後まであきらめずにあらゆる手を尽くしたというレベル5の達成思考力ということができるのではないでしょうか?

次回はリーダーシップのコンピテンシーについてお話ししたいと思います。


AHPコンピテンシーコラム第5話


今回はリーダーシップについてお話します。

達成思考力は、「部下に対して、自分が管理する組織全体の方針や戦略、ビジョンを明確に示し、リーダーとして認められることによりメンバーを目標達成に向け動機づけ動かす能力」です。

リーダーシップのレベルは、次のようになります。

レベル1

部下に組織の方針を伝える際は、部下全体には情報が伝達されておらず、上から言われたことをそのまま伝えている。

レベル2

部下全員に組織の方針を伝える際は、理由や背景なども説明している。しかし、伝達する内容に自分の考えを入れたり、部下を方針に沿ってまとめて動かしたりはしてはいない。

レベル3

会社の方針を部下に伝達する際は、自分の方針を加味して部下全員に伝達し、全ての部下を公平に処遇している。

レベル4

自ら組織全体の方針を考えて打ち出し、部下に対して出来る限りの支援や動機付けを自ら行ない部下全体から信頼され、方針に沿って組織を導いている。

レベル5

非常に高いカリスマ性を持ち、全社員がその方針やビジョンに神髄させて組織を導いている。

例えば、部門会で会社の方針が発表されたときに、部門会に出席したマネージャーがそれを自分の部署に持ち帰ってメンバーに浸透を図る行為に、レベルの差を見ることが出来ます。

持ち帰った資料を居合わせたメンバーだけに配布し、「読んでおくように」という指示を出し、メンバーから内容について質問に対しては、「会社の方針だから」或いは「部長が言っているから」という説明しかできないとしたとしたら、そのマネージャーのレベルは1と判断せざるを得ません。しかし、これはよくある風景です。

一方、すぐにメンバー全員を集めて、会社の資料を配布し、会社の方針とゴールを自分の考え方を加えて明確に説明し、メンバーからの質問に対しては、自分を主語にした表現で説明し、納得させているマネージャーはレベル3ということが出来るでしょう。

それに加えて、これらの会社の方針の具現化に向けて、メンバーの状況を常に観察し、相談を受けたときは、きちんと対応し、いざというときは自ら出馬することによって、メンバーが成果を上げることが出来るように支援しているマネージャーはレベル4ということが出来るでしょう。

色々なところで講演やセミナー、コンサルタンティングを行っていて、この話をすると、管理職にはやはりレベル4を求めたいという経営者の言葉を耳にしますが、これは当然とことと思います。

次回は対人影響力についてお話しします。

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