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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第二話


 コンピテンシーマネジメントはコンピテンシーという概念の活用によって人材を人財に変え、経営ビジョンを実現していく事です。このコンピテンシーマネジメントに欠かせないのが、コンピテンシーディクショナリー、コンピテンシーモデル、コンピテンシー測定で、私はこれをコンピテンシーマネジメントの3種の神器と呼んでいます。

 戦略的人財マネジメントにおいては、まず、戦略達成に必要な職務の役割と責任の明確化を行うと共に、戦略達成に必要とされる組織全体の能力基準の明確化を行います。そして、明確化された役割と責任を全うするために必要な職務毎の能力(職務要件)の明確化を行い、個人の能力と職務要件とのギャップの確認の順に進めていきます。これをコンピテンシーマネジメントと照合すると、「能力基準の明確化」が「コンピテンシーディクショナリーの策定」、「役割と責任を全うできる能力の明確化」が「コンピテンシーモデルの策定」、「個人の能力と職務要件とのギャップの確認」が「コンピテンシー測定」となります。これは、最近で各社で行われているスキルマップの作成のベースとなります。スキルマップの作成においても、最終的にその職務に必要な知識・ノウハウを特定しますが、知識・ノウハウを有効にするためにはコンピテンシーが必要になります。

 それでは、コンピテンシーマネジメントの3種の神器を説明していきましょう。

 まず、コンピテンシーディクショナリーは、業績をあげている人々のコンピテンシーを多数抽出して、心理学的な分析を施して有効と思われるものを分類してリスト化したもので、コンピテンシーの定義と各々のレベルの内容を記述したものです。従来、能力基準は能力の定義はあってもそれを測る場合、5段階評価で、「大変よい」「よい」「普通」「よくない」「大変よくない」といった評価をしていたことが多く、これは評価する人によって、「普通」の基準が異なることがあるため、自分が得意な分野では、他人に対して厳しい評価をしてしまう「厳格化傾向」が出たり、逆に弱い分野では評価が甘くなる「寛大化傾向」が出たりしていました。しかし、コンピテンシーディクショナリーには、明確な定義と各々の水準について、詳しく記されており、「厳格化傾向」や「寛大化傾向」が抑えられます。

 次に、コンピテンシーモデルは業務において常に高業績をあげている人をベンチマークとして設定し、高業績者たる要因を徹底分析し、これをモデル化したものです。これは、従来の「職務遂行能力」というような一般的・恒久的な能力モデルではなく、事業戦略が反映されたモデルで、職務に期待される成果は会社の戦略に応じて異なります。よって、他社のコンピテンシーモデルをそのまま自社に適用してもその人物が成果を上げて自社に貢献するとは限りません。

 最後に、コンピテンシー測定は、測定の対象者が業務において成果を上げる為に行ってきた行動を「どのように考え(Why)、どのように行動したか(How)」を詳細に訊くことにより、対象者が取った行動と思考のイメージを共有し、それを可能にしているコンピテンシーとレベルを明確にすることです。これにより測定されたコンピテンシーとコンピテンシーモデルで求められているコンピテンシーとそのレベルを比較して、ギャップを明確にすることを目的としています。

次回は3種の神器について更に詳しくお話します。

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