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AHPコンピテンシーコラム第121話

  • 靖 伊藤
  • 2024年8月22日
  • 読了時間: 3分

私は現在の仕事をする以前に、総合商社、ITベンチャー、外資系医薬品会社の3社で仕事をしてきましたが、色々な職場で働く機会に恵まれたお蔭で、色々な上司の下で働く事ができました。今回は、この中で、私が比較的若い時代にお世話になった上司のお話をしたいと思います。

その上司は非常に部下の行動をよく観察していて、例えば、私がお客様のところに訪問しようとすると、必ず、「どこへ行くんだ?」と呼びとめ、色々質問をしてきました。その質問は、基本的には拡大質問で行なわれ、最終的な確認は限定質問で行うという具合でした。その頃は、少しうるさいく感じていた感もありましたが、今になって考えると、それは私に対して、訪問の目的ややらねばならない事を意識づけていたのだと考えます。また、帰ってくると、「どうやった?」と訊かれます。これは、「結果がどうであったのか?」という事と「その為にどのようにしたのか?」という事の2つの事を訊かれているのです。これに答えることにより、私は今回の訪問の目的がどれくらい達成できたのか、そして、その為にやるべき事はどれくらい実行できたのかを確認でき、次に何をすべきかを整理する事ができたのです。

この上司の行動をコンピテンシーの観点で考えると、対人理解力、対人影響力、他者育成力の発揮が見られます。部下の行動を的確に観察し、質問力を発揮することで、相手のやろうとしている事を訊き出していたのは『相手の性格や行動の特徴など相手のバックグラウンドを理解し、相手が伝えようとしている考え、気持ちの背景までを含めてその通り共感的に理解している』レベルの対人理解力の現れと考えます。但し、この質問の目的は、単に部下が何をしようとしているのかを知る為だけではなく、相手に話せる事により、先ずは目的を明確に意識させた上で、その目的にかなった行動になっているのかどうかを再認識させることにあったと考えます。また、その際、その行動に不足の点があった場合も質問によってこちらから次善の策を引き出し、それでも私が納得しない場合は、様々な事例等を私が興味を持つ内容に触れながら話して頂き、結局のところ、そうしなければならないと納得させられていたのは、『理論武装、説明資料などを準備するだけでなく、相手の人間的な特性を敏感に見抜き、その特性に合わせた説得方法を事前に綿密に準備をした上で、様々な手管を用いて、相手が聞き入れるまで諦めずに説得を続けている』レベルの対人影響力の現れです。そして、これらの一連の行動が単に成果を挙げる為のPDCA(Plan⇒Do⇒Check⇒Action)の流れで行われただけではなく、部下の将来を考えて、育成しようとするPDCL(Plan⇒Do⇒Check⇒Learn)の流れでも行われたのは、『本人の今後のキャリア育成の明確な成果イメージとそのプロセスを示し、能力改善のために必要な業務経験を計画的に設定・実施させ、その結果を本人にフィードバックをするなど、計画的・長期的な指導・育成を行っている』レベルの他者育成力の現れであったと考えます。

 

 
 
 

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