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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第125話

今回は商品開発に関わる人たちのコンピテンシーについて考えてみたいと思います。

かなり前の情報番組“がっちりマンデー”で無印良品の商品開発者の話が取り上げられていました。無印商品はお客様のニーズを取り入れた商品を次々と開発、提供し進化を遂げている会社です。各売り場の販売員はお客様と接する中で、何気ない一言を聞き洩らさず、それらをメモに書き留めておき、多くの人たちから類似の要望が多い場合はその提案を上げると言います。一方、商品開発担当者も社内で考えるだけではなく、お客様のお宅を訪問し、雑談を含めた色々な話をする中で、お客様の要望を記録し、集めた情報を分析した結果、その解決策として新商品として提供しているのです。その中の一つの「ペットボトル用スポンジ」は真っ直ぐなものではなくL字型になっており、ボトルの内側が満遍なく洗えるものになっています。また「柔らかタオル」はタオルとして使った後、雑巾に変える事ができるように工夫が施されており、これもお客様の声を基に開発されてものです。

そこで、これらの人たちが発揮しているコンピテンシーを考えてみたいと思います。

先ずは、「直接に顧客に接し、顧客が求めているものを、敏感に且つ正確に把握し、対応していく能力」である「顧客志向力」です。ここで発揮されているのは、自ら、顧客の満足度や要求を常にモニターし、不満な点については、顧客からその理由を聞き出し、対応しているのみならず、顧客の言葉だけでなく、様子や雰囲気から、相手が求めているものや不満な点を敏感に察知し、対応しているレベルであると考えます。また、場合によっては、直接多くの顧客に接することで顧客ニーズの一般的な変化や兆候を敏感に感じ取り、その変化や兆候への対応を継続的に考案し自ら実行していることも考えられます。

お客様の要望を正確に把握する為には、「単に言葉や態度で伝えられたものだけでなく、言外にある意味も含めて、相手の気持ちや考えを、自分の考えや感情で歪めることなく、その通りに正確に理解していく能力」である「対人理解力」の発揮が必要になります。相手の性格や行動の特徴など相手のバックグラウンドを理解し、相手が伝えようとしている考え、気持ちの背景までを含めてその通り共感的に理解するレベルが必要となります。その為に、傾聴と質問の高いレベルが必要とされます。お客様を訪問した社員は雑談等を交えながら、お客様から色々な話をお聴きし、更に聴くべきところは訊き出しを行っていると考えられます。

このようなコンピテンシーを駆使して収集された情報を新商品に繋げるのが「自分の業務環境において、現状や問題などを正確に理解、整理、分析し、自分としての解決策を考案する能力」である「分析的思考力」です。多くの顧客の要望をそのまま商品とするだけではなく、その根本的原因を特定し、それに対応する方法としての商品を考案して提供することが顧客の信頼に繋がっていきます。

これらのコンピテンシーを商品開発担当者だけでなく、お客様と向き合う全ての社員が発揮することにより、お客様の信頼はより高まっていくのではないでしょうか?

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