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AHPコンピテンシーコラム第130話

靖 伊藤

今回は前2回に引き続き、三つ目の余り物ビジネス、余った薬を再配分する“わかばクラブ”についてお話したいと思います。

薬局では法律により、お客様から要望のある薬を断る事ができず、たった一人のお客様であっても薬をそろえておくことが求められます。また、薬はバラ売りがされていない為、卸から薬を仕入れる際には大量になり、それが不良在庫となり、廃棄処分を余儀なくされますが、廃棄にも費用が掛ります。それに目を付けたのが長年薬局経営をしている薬局のご主人でした。自身で薬局を経営している際の困りごとであった薬品の在庫は自分だけでない事を考え、余っているものを少量だけ必要な薬局に再配分するビジネスを構築して運営しています。

それではこのビジネスを考案した人のコンピテンシーを考えてみたいと思います。

このケースでも、バイク便と同じように、自社の困りごとを外に目を向けて、ライバルをパートナーにした点が一つの特徴です。その際に、薬に関する法律や全国における薬局の状況などの情報を正確に把握し、合法的な再配分の仕組みを構築しており、前二回と同様に、「自分の業務環境において、現状や問題などを正確に理解、整理、分析し、自分としての解決策を考案する能力」である分析的思考力が発揮されていると考えます。このケースにおける「自分の業務環境」は新事業をおこすという環境と捉える事ができると思います。また、このビジネスを構築するにあたり、新たな市場において、同業者の潜在的ニーズを収集した事は「あらゆる情報源や情報ルートを自ら開拓し、仕事で必要となる情報を誰よりも早く正確に、且つ幅広く集める能力」である情報探求力が発揮されていたと考えます。この場合も、対象地域が全国に及んでいることから、少なくとも「情報が必要な際は、自分の周りだけでなく、様々なところに積極的にコンタクトし、幅広く正確な情報を入手している。」のレベルが発揮されたものと考えます。

今までお話した3つの例から新事業の構築には、あるべき姿を描いた上で現状を三現主義で把握し、問題の本質を抑えた上で解決策を取ると言う問題解決の4つのステップに必要な“分析的思考力”と“情報探求力”の発揮が不可欠であると言えるのではないでしょうか?

 

 

 

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