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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第132話

私が以前通っていたスポーツクラブで、雑用を担当するAさん。年齢は6-才の後半の方だったのですが、このクラブに通ってくる多くの方々と仲良く、仕事をしています。挨拶もおざなりなものではなく、しっかり顔を見てしており、困っているような人には声をかけて何らかの解決策を提示するため、多くの人から信頼を受けて、会員の人から声をかけられることも多いようです。見た目は少しこわめの顔ですが、言葉遣いはやさしく、前に話したことを覚えているため、1回目に話した際に、興味がないそぶりをしたことを2回話すことはありません。

ここでAさんが発揮しているコンピテンシーを考えてみたいと思います。

まず、困っているような人への援助は、「直接に顧客に接し、顧客が求めているものを、敏感に且つ正確に把握し、対応していく能力」である『顧客思考力』の表れであると考えます。Aさんの活躍の場の多くは、更衣室、浴場とトイレですが、休む間もなく、各所を廻りながら、不備がないかどうかを見回るとともに、会員の状況を把握しており、少しでもいつもと違う雰囲気を感じると声をかけてきます。これは「顧客の言葉だけでなく、様子や雰囲気から、相手が求めているものや不満な点を敏感に察知し、対応している」レベルの発揮であると考えます。尚、話を聴くときは最後まで話を聞いて内容を確認していますが、これは「単に言葉や態度で伝えられたものだけでなく、言外にある意味も含めて、相手の気持ちや考えを、自分の考えや感情で歪めることなく、その通りに正確に理解していく能力」である『対人理解力』が発揮されていると考えます。ここでは、「言葉では明確に表現されない場合でも、相手の雰囲気から正しく理解している」レベルが発揮されており、これを思い込みに終わらせずに、きちんと質問をして、正確に状況を把握していると考えます。もうひとつAさんが発揮しているコンピテンシーがあります。それは、「社内外の関係者との間に、利害や取引的な関係を入れずに、とにかく親しい人間関係を作り上げていく能力」である関係構築力のコンピテンシーです。同僚、会員の区別なく、雑談を交わすことでなんでも言いやすい雰囲気を醸成しており、これはこのクラブで働く他のスタッフに比べても大きくリードしていると考えます。

昨今、シルバー人材の活用法が各企業の大きな課題となっています。高い専門能力だけではなく、Aさんのように様々なコンピテンシーを発揮するシルバー人材は企業にとって大事な戦力になると考える次第です。

 

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