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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第136話

今回はあるラーメン屋さんの年配の女性店員さんを取り上げてみたいと思います。

その店は家の近所にあるチェーンラーメン店です。店には男性の店長とその女性のほかに2名の若い店員さんがいました。その女性が偶々、私の前で作業をしていた為、その様子を見ていると、常に他の店員さんに声をかけながら仕事をしていました。店長を始めとする店員さんのその人から見れば、子供くらいの年齢ですが、その声のかけ方も上から目線のかけ方ではなく、丁寧でありながら、何か言った後で、「ごめんなさいね」という言葉を付け加えることで場を和ませていました。

食べ終わり、会計の際に領収書の発行をお願いしたところ、会計担当の男性が領収書の発行に慣れておらず、名前を書く場所を間違えたり、赤ペンで書いたりした為、結局、手書きの領収書を発行せざるを得なくなり、私も含めて何人かのお客さんを待たせることになってしまいました。私としては他のお客さんを待たせることになって、少し気まずい気持ちでいましたが、その女性の店員さんが自分の仕事をさっと済ませて、待っていたお客さんの会計を済ませてくれました。また、私に対しては、「お待たせしてすみませんね」と声をかけてくれました。会計担当の男性は、始めは少し焦っていましたが、その女性が他のお客さんに対応した事や、私に謝罪をしたことで落ち着きを取り戻し、最後に領収書を私に渡す時に、「お待たせして済みませんでした」と謝罪を述べました。

私はこの調子ではこの男性は謝罪を述べる余裕がないのではないかと考えており、この店に対する印象が悪くなると感じていましたが、この謝罪でその気持を拭い去ることができました。

これはひとえにこの女性店員さんの対応によるものと考えます。

ここで女性店員さんが発揮したと考えられるコンピテンシーとしては顧客思考力と他者育成力が考えられます。

顧客思考力は「顧客の言葉だけでなく、様子や雰囲気から、相手が求めているものや不満な点を敏感に察知し、対応している」レベルであると考えます。これは、他のお客様の会計対応に表れています。また、私の様子から時間が掛っていることで気まずい気持ちを感じ取ったのではないかと考えます。

他者育成力は「模範行動で部下や後輩の指導・育成を行っている」レベルであると考えます。彼女が私に謝罪を述べたことで焦っていた男性店員がそれを模範行動として謝罪を行った可能性が多いと考えます。

最近は、小売業や飲食業はパートさんやアルバイトさんがお客さんに直接対応する事が多く、この方々の対応がその店の評価を左右する事が多くなっています。この女性店員のようなコンピテンシーの持ち主がたくさんいる事が業績に与える影響が多いのではないかと考えた次第です。

 

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