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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第145話

以前、斜陽産業の中で頑張るある雑誌の出版社が取り上げられていました。この出版社は「親の雑誌」という雑誌を発行しており、これがかなり好調であるとのこと。「親の雑誌」はその人の歴史を1冊の本にしたもので、「自分史」が本人のものを書籍にするのに対して、「親の雑誌」は子供の要請で親にインタビューをして16ページの雑誌にまとめるというもので、「自分史」に比べて、価格も安いことが魅力であるとのことです。このビジネスを考え付いた編集長Kさんは、元々子供と離れて暮らす高齢者の「見守りサービス」を行っており、電話をかけた際に聞くお年寄りの話が面白いことから、「これを雑誌にしたら面白いのではないか」と考えたとのことでした。

このビジネスでは、編集長Kさんが自らインタビューを行っています。インタビュー風景を見ていると、相手の話に大きなリアクションをしたり、要所で静かに相手の話を待ったりしており、話を聴かれた相手からも「話しやすくてついつい話をしてしまった」との感想が聞かれました

ここでKさんが発揮しているコンピテンシーを考察してみたいと思います。まず、「見守りサービス」でお年寄りと電話しているときに、「これを雑誌にしたら面白いのではないか」と考え、それを実現したのは、「直接に顧客に接し、顧客が求めているものを、敏感に且つ正確に把握し、対応していく能力」である顧客志向力が表れであり、「直接多くの顧客に接することで顧客ニーズの一般的な変化や兆候を敏感に感じ取り、その変化や兆候への対応を継続的に考案し自ら実行している」のレベルが発揮されているものと考えます。また、インタビューにおいては、「社内外の関係者に対して、あらゆる説明の方法やツールを駆使しながら、こちらの考えている通りに相手が納得し、動いてもらうように影響を与えていく能力」である対人影響力と「単に言葉や態度で伝えられたものだけでなく、言外にある意味も含めて、相手の気持ちや考えを、自分の考えや感情で歪めることなく、その通りに正確に理解していく能力」である対人理解力による共感が相まって、相手が気持ちよく話をしている様子が伺われます。

新しいビジネスを考え、そして継続するための要諦を痛感した次第でした。

 

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