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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第146話

今回は、東京オリンピック決定の際に、脚光を浴びた『おもてなし』にフォーカスしてみたいと思います。2020年のオリンピックに向けて、日本全体が『おもてなし』の実現に向けて取り組んでいたといっても過言ではないでしょう。しかしながら、人によってこの言葉の捉え方も異なると思います。『気が利く』という言葉もその一つであると思います。旅館やホテルなどで、お客様のニーズを先取りして、顧客満足を上げているのは、「直接に顧客に接し、顧客が求めているものを、敏感に且つ正確に把握し、対応していく能力」である顧客志向力の表れであると思います。ただ、あまりにも気が利きすぎると、却って窮屈に感じてしまうこともあります。それより、何気ないちょっとした心遣いが「また来てみよう」と思わせられることがあると思います。そこで、前日、訪れたインド料理レストランの店員さんの心遣いを考えてみたいと思います。

まず、お店に入り、席に座ろうとしたとき、私はコートを着ていたため、それを脱ぐのに少し時間がかかっていました。そのとき、その店員さんは注文を取るため、メニューをもって出てこようとしていました。このような時、今まで行った多くのレストランでは、メニューをもってきてテーブルの上に、置いていくか、テーブルの側でメニューをもって待っていることが通常でした。ところが、この店員さんは、テーブルのところには来ずに、会計のところで何気なく、こちらの様子を伺い、コートを脱いで、座ったのを確認した後、メニューを持ってきたのです。通常の店員さんの行動では、よそよそしさを感じたり、焦りを感じたりしてしまうのですが、今回はある心地よさを感じました。

また、その時、持ってきてくれたお冷を3口で飲み干してしまったときに、頼む前にお代わりを持ってきてくれました。これは私だけでなく、他のお客さんにも同じように対応していました。

このような何気ないおもてなし、つまり“顧客の言葉だけでなく、様子や雰囲気から、相手が求めているものや不満な点を敏感に察知し、対応している”レベルの顧客思考力を発揮している店員さんこそ、「顧客関係の緊密性」を武器とするお店の重要な成功要因となるのではないでしょうか?

 

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