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AHPコンピテンシーコラム第157話

靖 伊藤

海外勤務において成果を上げるため、まず為すべきことは自身の安全の確保です。自身の安全の確保は、物理的なものと精神的なものの2種類があります。私の場合は精神的なものとして、駐在の際、短期ビザで入国し、滞在ビザに切り替えることになっていましたが、その際にトラブルに見舞われた経験があります。海外において、パスポートは命の次に大事なものですが、そのトラブルの際にパスポートを当局にブロックされ、数週間に亘り、パスポートのない状態が続いたときは、率直に言って、仕事どころではありませんでした。これ以外に安全にかかわることは色々あります。地域によっては誘拐が頻発している地域や治安が非常に悪い地域もあります。そのような地域において自身の安全を確保するためには視野を広く持ち、様々なことにアンテナを立てておくこと、つまり、「あらゆる情報源や情報ルートを自ら開拓し、仕事で必要となる情報を誰よりも早く正確に、且つ幅広く集める能力」である情報探求力が必須となります。そして、この「正確」な情報を得るためには「批判的思考」(クリティカルインキング)が必要となります。概して日本人は、良いように言えば素直な人が多く、他者から情報を得た時にあまり深く確認しようともせずに鵜呑みにしてしまう傾向が多いように感じます。これは海外においてだけでなく、国内においても見られ、他者の言っていることを確かめることもなく、勝手に解釈して理解したつもりが、後になって全く違っていたということがあると思います。「批判的思考」は他者の言っていることを単に疑ってかかるのではなく、相手の言っていることの真意は何か、或いは具体的にはどのようなことなのかを考えた上で、自分勝手な解釈をせず、自分の考えを述べて確認したり、相手から引き出したりすることで真の理解に到達するプロセスです。

海外の様々な国において、様々な人と話しましたが、国によって、また、人によって話し方は異なり、きちんと詳細を話してくれる人もいましたが、大雑把な説明や場合によっては誤った説明を受けたこともありました。初めの内は相手の言うことをそのまま聞いて色々失敗もしましたが、徐々に「批判的思考」を働かせることにより、情報の精度も高めることができたのではないかと考えます。

自身の安全の確保、つまり海外リスクマネジメントのためには、「批判的思考」を働かせた情報探求力は欠かせないのではないかと考える次第です・

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