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AHPコンピテンシーコラム第161話

靖 伊藤

以前のテレビの情報番組の特集で“予想ビジネス”である弁当屋の工場長が予想の達人として取り上げられていました。達人の弁当の注文予想の確率は99.9%と高確率です。達人にその秘訣はと訊くと、「経験と勘」と答えていますが、具体的には次のようなものでした。

まず、従来の注文数に基づき、基本となる予想数を設定します。次に曜日を勘案して、最初の予想数に対して増減を行います。この増減は、今までどのような曜日にどのような行事があったかという情報が達人の頭の中で整理されており、それに基づいて決定されるとのことです。その次に達人が行うのは、空模様の確認です。これは天気データの会社から得たものではなく、自分自身で空を見て、その状況と今までの実績との照合によって数の変更を行うそうです。そして、更にプラスして行うのが、配達員からの情報に基づく数の変更です。配達員は配達の際にお客さんとの会話を通して、それとなくお客さんの翌日の予定などを訊き出し、これらの情報が達人に報告され、達人はそれをもとに最終予想を立てた結果。その予想確率が前述の通り、99.9%となっているとのことです。

それではこの達人が発揮しているコンピテンシーを考えてみたいと思います。

まず、曜日や空模様、更に配達員からもたらされる情報に基づいて、100%に近い予想数をたたき出しているのは、「自分の業務環境において、現状や問題などを正確に理解、整理、分析し、自分としての解決策を考案する能力である」『分析的思考能力』であり、「情報やデータをただ分析するだけでなく、それに基づく洩れダブりのない原因究明を行い実行可能な対応策を自らで考え出している」レベルが発揮されていると考えます。また、配達員から予想数決定の基となる情報を集めているのは、「あらゆる情報源や情報ルートを自ら開拓し、仕事で必要となる情報を誰よりも早く正確に、且つ幅広く集める能力」である『情報探求力』であり、「独自の情報収集方法、プロセスや情報網を構築し、それらにより、貴重な情報をも迅速且つ正確に収集している」レベルが発揮されていると考えます。この情報収集自体、現在は仕組みとして機能していますが、この達人は長年に亘り本業務を担当している工場長であり、元々は個別に配達員から情報の聴き取りしていたものが仕組みに発展したものと考えます。

多くのビジネスにおいて予想は非常に重要なものです。ヌケモレのない現状把握で得た情報を的確に分析し、対策を立て、それを実行出来る人材は会社にとってまさに『人財』というべき存在なのでしょう。

 

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