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AHPコンピテンシーコラム第165話

靖 伊藤

以前、朝の情報番組で、リアルまとめサービスで業績を上げている会社が紹介されていました。リアルまとめサービスとは最近流行りのヴァーチャルではなく、実際にモノをまとめて提供するサービスで、この会社は漫画をまとめて販売することで業績を上げているそうです。漫画のまとめ販売というと前からあるビジネスですが、この会社の創業者は品揃えを日本一と称している通り、絶版以外の漫画の本は全て揃えています。これは全刊揃えることで読者の要望に対応し、ほぼ完売することで返本率を1%にするため、出版社が優先的に注文を受け付けてくれることで好循環となっています。因みに返本率の平均は27%とのことです。また、それに加えて全刊購入者に対しては、作者の描き下ろしボックスを無料で提供するなど、漫画愛好家にとっては何ともありがたいサービスを行っています。

そこで、この会社の創業者のコンピテンシーを考えてみたいと思います。

まず、一つは漫画愛好家のニーズを超える願望である必ず欲しい本を提供する仕組みを作ると共に、描き下ろしボックスを提供していることは、「直接に顧客に接し、顧客が求めているものを、敏感に且つ正確に把握し、対応していく能力である『顧客志向力』の表れであり、「直接多くの顧客に接することで顧客ニーズの一般的な変化や兆候を敏感に感じ取り、その変化や兆候への対応を継続的に考案し自ら実行している」レベルが発揮されていると考えます。同時に、「自分の業務環境において、現状や問題などを正確に理解、整理、分析し、自分としての解決策を考案する能力」である『分析的思考力』の表れでもあり、「状況や環境の分析から表面的なものではなく、潜在的なものをも見つけ出し、実行可能な対応策を自分で考え出している」レベルの発揮が推察されます。また、顧客だけではなく、返品率を低いレベルで抑えることを達成し、出版社の要望にも対応しており、これも上述の『顧客志向力』が同じレベルで発揮されているものと推察されます。

今までのビジネスを需給の双方の側面の要望をしっかり捉え、それに対応することで、大きな成果を上げた好事例と感じた次第です。

 

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