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AHPコンピテンシーコラム第169話

靖 伊藤

団塊の世代から我々の世代にかけての一つの大きな課題は定年後の再就職。この再就職に際しては、もちろん『専門性』が求められますが、それ以上に求められるのが、『コミュニケーション能力』と『問題解決能力』です。また『専門性』はただ特定の分野の知識を有しているだけでなく、「自分の専門的な知識やスキルを自ら積極的に拡大し、それを仕事に活用したり、周囲の人たちにも広めたりする能力」である『専門知識拡大活用力』が求められます。

この『専門性』を生かすために必要となるのが、『コミュニケーション能力』です。『コミュニケーション』は人から人への意思疎通の過程の全てを指した総称したもので、送り手と受け手の間であらゆる手段を用いて情報、意思、感情を共有する双方向のコミュニケーションが必要となります。

双方向のコミュニケーションとは、相手の事を理解する『傾聴・共感型コミュニケーション』と相手に自分の事を理解してもらう『指示・説得型コミュニケーション』の2つを指します。

今回は『対人理解力』のコンピテンシーに繋がる『傾聴・共感型コミュニケーション』についてお話ししたいと思います。

『対人理解力』は「単に言葉や態度で伝えられたものだけでなく、言外にある意味も含めて、相手の気持ちや考えを、自分の考えや感情で歪めることなく、その通りに正確に理解していく能力」です。

「きく」には「3つのきく」があります。一つ目は『耳で聞く』、これは聞こえているレベルです。2つ目は『口で訊く』で、質問により相手から訊き出すことです。3つ目は『心で聴く』で傾聴を指します。人の話を聴くときは、2つ目と3つ目の「きく」を実践することが大切ですが、順番としては3つ目の『聴く』を行うことで信頼感を熟成した後、2つ目の『訊く』を実践することで相手の深層心理を引き出し、理解を深めることが出来ます。私の知っているある女性経営者の方は「私はコミュニケーションが余り得意ではない」とおっしゃっていました。しかしながら、よく話を聴いてみると、その方のおっしゃるコミュニケーションは『指示・説得型コミュニケーション』、つまり話すことが得意でないということが分かりました。一方、この方は他人の話を聴くことが非常に上手で、「そうなんや」という相槌が相手にとって、よく聴いてくれているという印象を与え、相手から更に話を引き出していたのです。まさに「心で聴く」ことが、「口で訊く」以上の効力を発揮している様子でした。

この順番が逆になると、つまり「口で訊く」を先行させると信頼感が醸成される前に、訊かれる為、場合によっては尋問や詰問に感じてしまうことがありますので、注意が必要です。

話の聴き方でもう一つ重要なのは、傾聴していることを相手に伝えるボディーランゲージです。頷きや笑顔などはその一例ですが、その際に必要となるのが相手の気持ちを感じ取ることです。自分の気持ちを全て言葉にする人はあまり多くいません。が、その気持ちの多くは表情や動作、つまり、ボディーランゲージになって現れますので、話を聴きながらも相手をよく観察し、気持ちを感じ取ることが大切です。ただ、感じたことが誤解である場合もありますので、それを確認していくことが必要です。

続きは、次回お話ししたいと思います。

 

 
 
 

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