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AHPコンピテンシーコラム第170話

靖 伊藤

前回は『コミュニケーション能力』の『傾聴・共感型コミュニケーション』の中で、「3つのきく」の内、『心できく(聴く)』について掘り下げてみました。

今回は『心できく(聴く)』ステップの次に行う「口できく(訊く)」ステップについてお話しします。

「口できく(訊く)」ステップでは質問力が大きなカギとなります。「それでは、質問は何のためにするのでしょうか?」。この問いに対する答えとしては、最も多い答えは、「相手の事を知るため」というものです。確かに人は相手の事を知るために質問をします。その質問の仕方を大きく2つに分けると、相手に選択肢を与えるオープンクエスチョンとこちらから選択肢を提示するクローズドクエスチョンがあります。オープンクエスチョンは、「その時、貴方は何をしましたか?」、「何故それをしたのですか?」等、6W5Hを使用して、相手の中にある答えを引き出すものです。一方、クローズドクエスチョンは「あなたは○○をしましたか?」等、こちらが考えていることを明示して確認を求めるものです。これらの質問はどちらが良い悪いというものではなく、相手の反応を見ながら使い分けることが重要です。例えば、話すことが好きな人に対してクローズドクエスチョンを多用すると、相手は自分が思うように話せないため、イライラしてくることがあります。一方、話すことが苦手な人はクローズドクエスチョンに対しては比較的うまく話せるのに対し、オープンクエスチョンを多用すると、追い詰められた感情を持ち、話ができなくなる事があります。相手からの情報を引き出すためにはオープンクエスチョンは有効な質問ですが、前述の状況を見極めるとことが重要で、その為にも意識的に質問を行うことを心がけることが必要になります。

質問のもう一つの目的は気付きをあたえることです。こちらが答えを分かっているときでも敢えて質問をするときがあると思います。これは相手にそれを話させることにより、気付きを与えます。一般的に人は他人から言われるより自分で話したことの方が頭に残り、行動に移す傾向があります。この時、オープンクエスチョンが有効となります。オープンクエスチョンの6W5Hの、6WとはWho(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(どのような目的で、或いはどのように考えて)、Whom(誰に)を指します。通常は5Wと言われますが、Whomが重要な情報となることが多いため、あえて6Wと称しています。後の5HはHow(どのようにして)とこれに言葉を加えたHow much(いくら)、How many(どのくらい), How long(どのくらいの時間)、How far(どのくらいの距離)で、後者の4つは定量化に有効です。この6W5Hの中で、相手の行動や思考をつまびらかにするものがHowとWhyです。Howは『どのように』、つまり相手の行動を引き出します。一方、Whyは『何故』ですが、これを『どのように考えて』と置き換えることにより、相手の思考を引き出すことが出来ます。人は行動を起こすとき、『どのように考え』、『どのように行動するか』を繰り返しますので、この質問をすることにより、相手が何か行動を起こしたときの状況を走馬灯の如く、訊き出すことが出来、上手くいった時もいかなかったときもその時の思考と行動が結果にどのように作用したかをうかがい知ることが出来、育成に繋がります。

このように、「口できく(訊く)」ことは自分にとっては幅広い情報収集が出来ると共に、相手にとっても気付きを得るという効果があります。

 
 
 

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