AHPコンピテンシーコラム第180話
- 靖 伊藤
- 3月28日
- 読了時間: 3分
事業を起こした後、継続していくためには、前話でお話した「様々な事象間に共通する意味や関係を把握したり1つの事象から連想的に別の新しい概念を見出したりして、新しい考え方やビジネスモデル、独自の理論を作り上げていく能力」である『概念的思考力』や「自分の業務環境において、現状や問題などを正確に理解、整理、分析し、自分としての解決策を考案する能力」である『分析的思考力』は必須のコンピテンシーですが、これらのコンピテンシーで策定した戦略を推進していくためには、周りの人たちの協力が不可欠です。この協力を得るためには、今まで何度もお話ししてきました『対人理解力』と『対人影響力』が必要になりますが、これらのコンピテンシーを有効に働かせるためには、『関係構築力』によって信頼に基づいた人間関係を構築することが必要です。
『関係構築力』は「社内外の関係者との間に、利害や取引的な関係を入れずに、とにかく親しい人間関係を作り上げていく能力」です。このようにお話しすると、安易に「異業種交流会に出かけて、全ての人と名刺交換をし、反応の良い人とすぐさまビジネスの話を進め、そうでない人とは関係を断ってしまえばいいだろう」と考えて行動する人も散見しますが、そんな人に限って、結果がすぐに出なかったり、結果が出たとしてもそれが良い人間関係に基づくものではなかったりするため、長期的で見ると良い結果を生まなかったりすることが多々あると考えます。本当に高いレベルの『関係構築力』のコンピテンシーを発揮する人は目先の事だけに囚われずに長い年月をかけて関係を構築しているようです。
私の友人で、20年ほど前に起業したAさんもその一人です。『袖擦り合うも他生の縁』を座右の銘とし、社会人になる前から色々な人たちと関係を構築、継続して、起業する頃には500名以上の方と年賀状のやり取りをするようになっていました。また、地域の世話役や同窓会の幹事など人が敬遠する仕事も、やり手がいないときに頼まれれば嫌な顔をせず引き受けていました。初めは便利屋と考えられていたかもしれませんが、そんなことが長年続いた結果、何かといえば相談を受けるようになっていました。また、この中には、仕事で知り合った方も多く、仕事の関係が終了した後も年賀状や時折の食事などでプライベートな関係を続けていたとのことです。起業した当初はかなり苦労をしていましたが、長年の付き合いがある人と会って雑談をしている中で仕事の相談も受けるようになり、それらが今の仕事の基盤になったり、それらの人たちから得る情報が現在の仕事に大変役立ったりしているとのことです。
ここでAさんの発揮していた『関係構築力』のコンピテンシーのレベルを考えてみたいと思います。まず、長年に亘る友人から仕事の相談を受け、それがビジネスに繋がっているのは、「相当な無理難題以外は日頃の友好な関係により、こちらの言い分を喜んで聞いてくれるような親しい関係を構築している」のレベルが発揮された結果と考えられます。また、元々仕事の付き合いから発展してプライベートの親しい関係を保っているのは、「業務からスタートしていながら、業務を全く離れた本当の親友関係を構築している」レベルの発揮が考えられます。
すぐに結果を求められる現在、長年を掛けた人間関係の構築は難しいとは思いますが、若いころからの気持ちの持ち方とそれに基づく行動が『関係構築力』の向上に繋がり、それが成果に繋がることから、『関係構築力』は長期を見据えた自己啓発が必要なコンピテンシーであると考える次第です。
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