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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第29話

日常で気がついたコンピテンシー。 前回は外食店の店長さんについてお話をしましたが、今回は外食店の店員さんのお話をしてみたいと思います。

 前回、お話をしましたA店(流行っていないお店)でも、店員さんは一所懸命に働いています。というより作業をしています。例えば、お客さんが注文した品物がなかなか来ないとので催促しようと店員さんを探していても、店員さんは自分の作業に夢中でお客様の様子に気が付かず、お客さんはいらいらしています。その結果、お客さんの飲むピッチや食べるピッチがゆっくりとなったり、注文したものをキャンセルされたりして、お客様単価のダウンに繋がったり、リピートにつながらなかったりしているのです。

 一方、流行っているB店の店員さんは、常に、自分の担当のお客様はもちろんのこと、担当でないお客さんの様子にも注意を払っており、何か頼みたそうにしていると、すぐに飛んでいって対応しています。もちろん、ミスが全くないわけではありません。例えば、コップを割ったりした時は素早くその処理とお詫びをして、最後にお客さんを見送る時にもお詫びをしています。そのため、たとえ、トラブルにあったお客様でも、お店を出るときには機嫌が直り、リピーターへと変わっていくのです。

 それでは、この2つの外食店の店員さんの違いをコンピテンシーの観点で比べてみましょう。

顧客志向力のコンピテンシー については、A店の店員さんは「顧客からの直接的な要求に対しては対応しているが、自分から顧客満足につながるようなことを察知し研究したり、それを行動に移したりはしていない」レベル、或いはそれに満たないレベルであるのに対し、B店の店員さんは「顧客の満足度を常にモニターし、不満な点については、顧客からその理由を聞き出し、対応している。」レベルであるということができるでしょう。

 もう一つは達成志向力のコンピテンシーです。A店の店員さんは自分の仕事の範囲だけを一所懸命にやっている、つまり「与えられた目標はその達成に向けて努力している」レベルであるのに対し、B店の店員さんは、お店の売り上げ(つまり発展)を自分の目標と考えて、自分の担当外であっても、ご来店いただいたお客様に満足を提供するという「自分の目標の達成のためには、いかなる困難があっても諦めることなく、あらゆる手段を駆使して達成に向けて取り組んでいる」レベルであると言えるでしょう。


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