top of page

AHPコンピテンシーコラム第33話

靖 伊藤

日常で気がついたコンピテンシー。 今回はファーストフード業界のお話です。

 ファーストフード業界はマニュアルによる指導をベースとしています。しかし、それは従業員個人によって受け止め方も違い、本来の目的を理解して実施する人もいれば、形だけを実施する人もいるなど様々です。

私は、出張中に、チェーン展開をするある牛丼屋さんへ入りました。その時は、時間が早かったせいか、まだ中は誰もお客さんは一人もおらず、そこの店員さん(店長だったかもしれませんが)は黙々と仕事をしており、私が入ってメニューを見ていると、せき立てるように「ご注文は?」と訊いてきました。食べている時も、せかせかと生姜入れを入れ替えたり、掃除をしたりで、じっとしているときはありませんでした。勿論、「失礼します」とは言うのですが、私はやはりせき立てられる気分になってしまい、慌てて食事をとり、うっかり代金を払わずに出てしまうところでした。その後、別の日に同じチェーン店の他の店に行きましたが、そこの店員さんはこちらの注文が決まった頃を見計らって注文を聞いてくれましたし、掃除や生姜の入れ替え等は私の近くに置いてあるものについては食べているうちはそっとしておいてくれました。そのおかげで私はゆっくりした気分で食べることが出来ました。

この二人は同じ社員教育を受けている筈ですから、行動の違いは個人のコンピテンシーの違いであることは間違いありません。後者が、お客さんが注文を決めたのを見計らって注文を取りにきたのは、「顧客の様子から、相手が求めているものを敏感に察知し、対応している」レベルの顧客志向力を発揮しているのに対し、前者は、注文と取ることだけを考え、顧客志向力を殆ど発揮しておらず、後者が食べているうちはゆっくり食べられるように仕事を控えてくれたのは、「言葉では明確に表現されていないことでも、相手の雰囲気から正しく理解している」レベルの対人理解力を発揮したのに対して、前者は自分の仕事を優先してお客の気持ちを察することが出来ず、対人理解力を発揮していなかったことになります。

お客様の気持ちを理解せずに、自分の仕事を優先している人は、結局のところ、本当の仕事をしていないということになるのではないでしょうか。

 
 
 

最新記事

すべて表示

AHPコンピテンシーコラム第179話

4月には新しい年度を迎えるため、企業や各種団体では、日本の動静だけでなく、世界の動静を見据えて、戦略を立てていることと考えます。戦略を立てる際に必要となるのが、現状の分析です。新年の経済番組で、色々な専門家が今後の見通しを述べていますが、その根拠となるのが、現状の分析で、聴...

AHPコンピテンシーコラム第178話

前回は「批判的思考能力」についてお話しすると共に、ロジカルシンキングの重要な要素である「論拠」と「根拠」と「結論」の繋がりについてお話ししましたが、「論拠」を理解する際に重要なのが異文化理解力です。 以前、『今月の一冊』で紹介しました『異文化理解力』(エリン・メイヤー氏著、...

AHPコンピテンシーコラム第177話

前回は「自己責任」とロジカルシンキングの繋がりについてお話ししましたので、今回は、もう一つの「批判的思考能力」についてお話ししたいと思います。 「批判的思考能力」は相手の言うことを鵜呑みにしない能力です。これは、相手が嘘をつくからというのではありません。国によっては、宗教な...

Comments


  • Facebookの社会的なアイコン
  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

©2022 by アイ人財企画。Wix.com で作成されました。

bottom of page