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靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第64話

日常で気がついたコンピテンシー。 今回はアメリカであわやの鉄道の大惨事を未然に防いだ男性達のお話です。

ある日、運転手のブレーキ操作のミスにより、機関車が無人で発進してしまいました。機関車の向かう先には大きな街があり、その手前の魔のカーブに最高時速で突っ込むと、車両が脱線事故を起こし、積荷の化学物質が爆発して、大惨事を惹き起こす最悪の事態が予想されました。その時、連絡を受けた管制室の男性(仮称ジム)は、機関車が時速10km程度で走っていると考え、先の踏み切りに行き、機関車に飛び乗ってブレーキをかけようとしましたが、機関車は既に時速30kmを超えて踏み切りを通り過ぎた後でした。そこで、彼は人家の少ない地域の車両の引込み線の切換を使って、機関車を脱線させて止めようとしました。ところが、機関車はその切換装置をも跳ね飛ばしてしまい、またもや、失敗に終わります。そこで、ジムは、同じ線路を逆方向から向かって来て、引込み線に回避した車両を使って暴走車両を追尾し、走りながら二つの車両を連結し、ブレーキをかけて止める作戦を考えて、それを回避した車両の2名の乗組員達に連絡し、2人の乗務員たちがそれに挑み、見事、連結に成功しました。しかし、それでも機関車は思うように減速せず、魔のカーブにあと数キロに迫ったので、ジムは機関車の先に回り、最後の手段として、危険を顧みずに、減速してきた機関車に飛び乗り、ブレーキをかけることに成功し、大惨事を免れる事が出来たのです。

この事態を回避したのは、彼ら3人を含む関係者のチームワークによるものですが、今回はジムのコンピテンシーに焦点を当ててみたいと思います。まず、ジムは事故の発生の連絡を受けて、その状況を聴き取り、先の踏み切りに先回りし、機関車に飛び乗ってブレーキをかけようとしたり、車両が踏切を通り過ぎたことを知るや否や、人家の少ない地域の車両の引込み線の切換を使って、機関車を脱線させて止めようとしたりしました。そして、それが失敗すると、引込み線に回避した車両で暴走車両を追尾し、走りながら連結し、ブレーキをかけて止める事を実行させ、最後に自ら、機関車の先に回り、危険を顧みずに、減速してきた機関車に飛び乗り、ブレーキをかけようとしました。これらの一連の行動は、「情報やデータをただ分析するだけでなく、実行可能な対応策を自らで考え出している」レベルの分析思考力であり、これらの方策を次々に打ち出していったことは「業務遂行や問題解決に際し、既存の複数の方法に自分なりの修正を加えた新しい方法で業務を遂行したり、全く新しい方法を使ったりして実行している」レベルの柔軟性です。そして、この絶体絶命の危機を回避できたのは、車両の安全走行を確保するという自らの使命を全うするという「常にチャレンジングで且つ現実的な目標を設定し、いかなる困難があっても諦めることなく、あらゆる手段を駆使して達成に向けて取り組んでいる」レベルの達成志向力が発揮されたからこそ成し遂げられたと言うことが出来るのではないでしょうか。

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