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AHPコンピテンシーコラム第72話

靖 伊藤

日常で気がついたコンピテンシー。今回は顧客志向力にフォーカスを当ててみたいと思います。

 東京に出張した時に、友人と昼食にスパゲティーを食べに行った店で、食後の珈琲を楽しんでいたのですが、友人が私のコップの水がなくなったのに気付き、自分自身の水も殆どなかったので、友人は店員さんを呼んで、私のコップを指して「水を下さい」と頼んでくれました。すると、その店員さんは新しい水の入ったコップを一つ持ってきて、置いていきました。そこで、友人は自分の分ももう一つ欲しいと声をかけましたが、その店員さんはその言葉には気がつかずにそのまま行ってしまいました。暫くすると、別の店員さんがこちらの様子に気が付いて「何か御用でしょうか?」と尋ねてきたので、先程と同じ様に頼んだところ、その店員さんは私のコップの水が減っているのに気がついたのか、「お水を二つお持ちしましょうか?」と尋ねてくれたので、「お願いします」と答えたところ、二つの新しい水の入ったコップを持ってきてくれました。

 このような話はよくあることかもしれません。さて、それでは2人の店員さんの発揮した顧客志向力のコンピテンシーのレベルを比べてみたいと思います。まず、最初の店員さんは「水を下さい」という依頼に対して、私には水を持ってきましたが、友人の水がなくなっているのに気付かず、また、その後、声をかけられても気がつきませんでした。これは「顧客からの直接的な要求に対しては対応している。しかし自分から顧客満足につながるようなことを察知し研究したり、それを行動に移すことはしていない」レベルの顧客志向力のコンピテンシーしか発揮をしていないと言うことができます。一方、二人目の店員さんは、こちらの様子を窺い、問いかけ、依頼を聞いた後で、私の水が少なくなっているのに気付き、私も欲しいのではないかと考えて、それを確認した上で、水を2つ持ってきてくれました。これは「顧客の満足度を常にモニターし、不満な点については、顧客からその理由を聞き出し、対応している」レベルの顧客志向力のコンピテンシーが発揮されたと言うことができます。

 もし、最初の店員さんが後の店員さんと同じように対応してくれていたら、私たちはもっとこの店のファンになっていたかもしれませんね。

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