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AHPコンピテンシーコラム第73話

日常で気がついたコンピテンシー。今回は対人影響力のコンピテンシーにフォーカスを当ててみたいと思います。

対人影響力は「社内外の関係者に対して、あらゆる説明の方法や道具を駆使しながら、こちらの考えている通りに相手が納得し、動いてもらうように影響を与えていく能力」で、一般的には交渉力とか、プレゼンテーション能力と呼ばれています。これをある展示会で見たホームページ制作のプレゼンテーターのうち、AさんとBさんのプレゼンテーションを通してレベルの差を考えてみましょう。

まず、Aさんはパワーポイントを使って、ホームページ制作の考え方、使っている言語や技法などを事細かく説明し、自社の商品が最新の方法である事を強調していました。但し、説明の内容はデザインや技術に関するものが中心で、事例も建設会社や小売業等納入先の紹介に止まり、その内容には殆ど触れていませんでした。これは「こちらの考えや要求を相手に伝える際に、その根底にある理由を正確に伝えることにより、相手を説得している」レベルのコンピテンシーを発揮していると言えます。

一方、Bさんはパワーポイントで説明する内容を資料として聴衆に配布した上で、ホームページ制作に関する考え方や自分のお客さんがこのホームページを使ってどのようにビジネスを展開しているかという事を説明し、聴衆から投げかけられた質問に対しては相手が納得するまで対応していました。後でBさんに話を聞いたところ、今までにも何度かプレゼンテーションをしてきたが、聴衆はこのホームページを制作したらどのような得をするかという事に最も関心を持っていたので、今回はそこに焦点をあてて資料と説明を準備し、以前出された質問をまとめておいたとの事でした。これは、「何か相手を説得するに際し、事前に最も効果的な方法を考え、綿密な準備(理論武装、説明資料など)をした上で説得し、相手が聞き入れるまで諦めずに説得している」レベルを発揮しているということが出来るでしょう。

AさんのレベルをBさんのレベルに引き上げる事で、聴衆の反応がかなり違う事を実感できた出来事でした。

対人影響力は交渉の場において発揮されています。交渉の場においては、顧客のニーズに合った自社の製品の特徴を詳細に説明してもなかなか成約に至らない場合もあります。そのような場合、出来るセールスマンといわれている人たちはどのようにしているのでしょうか?

これはある食品会社のセールスマンがそれまで成約できなかった客先から初めて成約した時の話です。彼は顧客の発注権限を持った部長への商品紹介の機会を得た時、最初は他の客先で上手く行ったときのように自社の商品を使うことで客先のお客様を喜ばせ、売上が上がるという事についてサンプルを使って、実例を交えて説明をしました。しかし、部長がなかなか乗ってきませんでした。そこで、彼は以前、自社の前の担当や他社のセールスマン仲間との雑談で、「あの部長は理屈だけではなかなか納得してくれない」と言っていたのを思い出して、「やはりそれなら正攻法では埒があかない。ここは相手を持ち上げて情に訴えた方が良いだろう」と考え、「この商売に私の馘が掛かっています。ここは一つ、部長のお力で何とか私に手柄を立てさせてください。」と深々と頭を下げてお願いをしたところ、「よし、そこまで言われたら買わないわけには行かないな」と言って注文を受けることが出来たと言っていました。

彼の発揮した対人影響力のコンピテンシーは「相手の人間的な特性を敏感に見抜き、その特性に合わせた説得方法を事前に綿密に準備をした上で、相手が聞き入れるまで諦めずに説得を続けている」レベルです。これは最初からただ情に訴えるだけではなく、きちんと論理に沿った説明をした後、相手の反応を見ながら打ち手を変えて情に訴える。これが成果において大きな差に繋がったのではないでしょうか?

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