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AHPコンピテンシーコラム第74話

靖 伊藤

日常で気がついたコンピテンシー。 今回は対人理解力のお話です。

対人理解力は「相手の気持ちや考えを、自分の考えや感情を歪めることなく、その通りに正確に理解していく能力、単に言葉や態度で伝えられたものだけでなく、言外にある意味もその通り自分でも判るくらいに察している能力」で、人の考えている事を慮る能力です。これをあるハウジングセンターの営業マンの行動を通してレベルの差を見てみましょう。

 これはもう30年近く前の話になりますが、私が家の買い替えを考えて、色々なハウジングセンターを見て歩いていた頃の話です。あるメーカーさんのモデルハウスに入ったところ、熱心な営業マンのAさんが詳しく説明をしてくれました。非常に丁寧な説明で始めは有難かったのですが、そろそろ次に行こうと思ってもなかなか説明が終わりません。次の予定もあり、自分でも判るくらいにその焦る気持ちが顔に出ていても説明が終わらなかったので、ついに「済みませんが、時間がないのでこれで失礼します。」と言ったところ、やっと話すのを止めた次第でした。これは「はっきりと言われたことは、その趣旨を理解している。」レベルのコンピテンシーしか発揮しておらず、私としては「ここはもうこりごりだな」という印象が残り、彼が居るところに再び行くことはありませんでした。

 一方、同じセンターにあった別のメーカーのBさんもやはり詳しく説明をしてくれました。しかし、Bさんは、私が何かを話そうとすると、自分の話を止めてこちらの言う事を聴き、私の質問にもきちんと答えてくれました。そして、話が切れたところで、そろそろ帰ろうかなと思って、置いていた荷物を取ろうとすると、それまで説明していた資料をまとめて袋に入れてくれて、「ご検討の上、またのお出でをお待ちしております。」と送り出してくれました。これは、「相手の伝えようとしていることは、その言葉の内容とそれに関連する相手の感情も含めて理解している。」レベルを発揮しているということができます。結果的に、このハウジングセンターも私が考えていた価格にあわず、購入は見送りましたが、その後、他のハウジングセンターに行ったときも、「このメーカーさんのモデルハウスは寄ってみようかな。」という気持ちが残っていたと感じています。

 顧客を惹き付けるのも、顧客が離れるのも、対人影響力が大きな影響を与えている事は言うまでもありませんが、そのベースとして、営業マンの対人理解力が大きく関わっている事を心に留めておくことが大切でしょう。

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