前回はコンピテンシー測定に先立って、あるべき姿としてのコンピテンシーモデルについてお話ししましたが、今回は、コンピテンシー測定の考え方とそれを行うために必要なスキルについてお話しします。
コンピテンシー測定は、その職務の候補者のコンピテンシーのレベルがコンピテンシーモデルのレベルとどれくらいギャップがあるかということを測定するもので、社員の人材育成する際に現在のレベルを計る場合や、外部から人を採用する場合に行います。最良なのはコンピテンシーモデルとぴったり適合しているか、それを超えるものなのですが、なかなかそのようなケースはありません。
コンピテンシーは「自らの職務において高い成果を生み出すために、安定的に、行動として発揮できた能力」です。よって、測定の要諦はまずその人が成果をあげる際に取った言動を時系列に詳しく拾い上げることです。その為の基本は観察です。例えば、社員の人財育成に際して現在のレベルを測る場合は、その人が普段、仕事をしているとき、どのような行動をとっているかを注意深く観察し、時折、その時にどのように考えてその行動をおこなっているかを訊くことです。そして、仕事の進捗確認や相談を受けるときなどの面談の機会を捉えて、『どのように考え、どのように行動したか』を深く訊いていきます。このときに、有効になるのが、コーチンなどに用いられる積極的傾聴法です。傾聴といっても、ただ聴くだけでは駄目で、コーチングで用いられる、質問、傾聴、直感、自己管理、そして確認の5つのスキルの活用が必要になります。
まず、最初に質問のスキルについてお話します。質問は5つの目的と7つの方法があるといわれています。5つの目的とは疑問、確認、意見(提案)、動機付け、潤滑油で、7つの方法とは、限定質問、拡大質問、誘導質問、選択質問、深堀質問、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック、フット・イン・ザ・ドア・テクニックです。これらの質問の中で、積極的傾聴法において、よく使われる方法が疑問、すなわち情報収集を目的とした拡大質問と深堀質問です。相手の現在の状況をまず聴き取ることが重要だからです。拡大質問はオープンクエスチョンとも言われ、5W1Hで行う質問で、拡大質問で質問すると相手は自分の脳の中から拾い出す必要があるため、最初はストレスを受けますが、このストレスが脳を活性化させます。これに対するものが限定質問で、これはクローズドクエスチョンとも言われますが、相手がイエスかノーかで答えられる質問で、相手はそれほどストレスを受けませんが、この質問が続くと、一般的に人は受動的になっていきます。また、限定質問は訊き手の思惑や推量が入りますので、相手は訊き手の顔色や様子を窺いながらこたえる可能性があるため、ややもすると訊き手の作ったストーリーを裏打ちするだけで予想していなかった事柄に対する情報収集が出来ない可能性があります。こういうと限定質問を悪者扱いにしているようですが、そうではなく、何が拡大質問で、何が限定質問であるかを、きちんと意識して使うことが必要なのです。
さて、次回は、傾聴のスキルについてお話しします。
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