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ビジネスコラム: サービス

AHPコラム コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十一話

今回は、相手の真の現状や真意を引き出す『質問』についてお話しします。

さて、皆さんは何のために『質問』をするのでしょうか?

この問いに対しては、「相手のことを知るため」「自分が考えていることと相手が考えていることが同じかどうか確認するため」等、色々な答えが返ってきます。

そこで、ここでは『質問』の5つの目的をお話ししたいと思います。

1つ目は、『疑問』の目的です。前述の「相手のことを知るため」などがこれに相当します。

2つ目は『確認』の目的です。これは前述の「自分が考えていることと相手が考えていることが同じかどうか確認するため」などがこれに相当します。

3つ目は『意見・提案』の目的です。意見や提案をするとき、直接的な表現では、「こうしましょう」と言いますが、その場合、これが押しつけと捉えられることがあるので、少し婉曲的な表現として、「このようにしてはどうでしょうか?」というような『質問』の形式をとることにより、相手に決定権を与える手法がよく取られます。

4つ目が、『動機付け』の目的です。例えば、皆さんもメンバーと話をしているとき、自分が気付いていて、相手が気付いていない場合に、直接的な表現、つまり「こうだろう」というのではなく、『質問』をすることで気付きを引き出していることがあると思います。これによって、相手は自分で話したことなので、話したことを行動に移しやすくなるのです。その意味において、この目的は一つレベルの高い『質問』の目的と考えられています。

5つ目は、『潤滑油』の目的です。『質問』には、自問自答(レトリカルクエスチョン)があります。例えば、「皆さんはどのように考えますか?」と尋ねた後、答えを聞くことなく、「私はこのように考えます。」と話す手法です。これは初めから答えを話すと、相手は受け身になってしまうので、一旦質問することにより、相手に考えてもらい、主体的になってもらった後で、答えを話すことで、答えの受け入れを比較的容易にする手法です。

この『質問』の5つの目的に対して、5つの方法があります。

1つ目は『拡大質問』です。これは『オープンクエスチョン』とも言われますが、6W5H(Who、Whom、What、When、Where、Why、How、How many、How much、How long、How far)を用いて、相手の考えていることを引き出す質問です。目的で言うと、主に『疑問』や『動議付け』の目的に使われます。

2つ目は『限定質問』で、『クローズドクエスチョン』とも言われます。これは一つの事象に対して、答えを“はい”か“いいえ”でいずれかの答えを引き出す質問で、主に『確認』の目的に使われます。『限定質問』の質問としては、「昨夜、食事を取りましたか?」というのに対して、『拡大質問』では、『昨夜、何を食べましたから?』という質問になります。この時、相手の目を見ていると、『限定質問』の時は、答えが“はい”か“いいえ”なので、比較的スムーズに答えられますが、『拡大質問』の時は、何を思い出すために、目が上に動きます。これは脳の記憶を呼び起こそうとしているので、脳が活性化しているとも言われています。

3つ目は、『選択質問』で、この質問が幾つかの選択肢を並べてそのうちから答えを選ばせる質問です。例えば、「昨夜は和食、中華、洋食のどれを食べましたか?」という質問になります。

4つ目は、『深堀質問』です。これは一つの質問に対して出てきた答えに対して、さらに質問をかぶせていく質問です。例えば、「昨夜何を食べましたか?」に対して、「オムライス」という答えに対して、「どこで?」や「何時ごろ?」、「誰と?」などを訊くことにより、相手の昨夜の食事風景が走馬灯のようにイメージできるようになります。この質問はメンバーの仕事ぶりを把握するときに、『疑問』の目的や『確認』の目的に対して非常に有効です。

5つ目は誘導質問です。これは関連する質問を続けて行うことで、相手が気付いていなかったことを気づかせることができます。

今まで、5つの質問方法について、お話してきましたが、これは『拡大質問』と『限定質問』の良し悪しではありません。話すことが好きな人は『限定質問』を重ねられるとイライラする傾向いがあります。一方で、あまり話すことが好きでない人は、『拡大質問』を重ねると、一杯一杯になって話せなくなる傾向があります。『深堀質問』や『誘導質問を』を行うときに、『限定質問』を重ねて訊いていくと、詰問となる危険性があり、相手は質問者の意図を図りつつ話すことになり、話す内容にバイアスがかかることもあります。よって、拡大質問』、『限定質問』、『選択質問』を相手の反応を見ながら使い分けていくことが肝要です。

次回は残りの3つのスキルについてお話しします。

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コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十二話

今回は、残りの3つのスキルについてお話しします。

まず『直観』のスキルは『直感』と間違えられますが、「直観とは,分析,比較対照や検証などなんらかの思考操作を経て間接的に対象の特質や関連性を認知・理解することではなく,直接的に知覚過程と一体となり,瞬間的に対象の特質や関連性,問題の意味や重要性を認知・理解する認識の一形式,およびその能力」(コトバンクより)を指します。明確な理由はないが、この道を行くと何か悪いことに出会いそうな気がして迂回をしたところ、後で聞くとやはりその道を行った人が事故にあったということがあります。他人の話を聴くときはそのままをまず受け止めることが大切です。そのために、「考えない、予測しない、リードしない」の3つの「ない」を心掛けることが肝要です。他人の話を聴いているときに考えていると、大事な言葉を聞き落としてしまうことがよくあります。例えば、相手の言ったことで、それが自分の問題につながっていると、そちらに思考が言ってしまい、相手の言っていることが聞こえなくなります。また、相手が次はこう言うだろうと予測すると、予測していることは聞こえますが、そうでないことは聴き過ごしてしまうことがあります。リードをすると、確かに自分が聞きたいことは聞けますが、本当はこうであった言うことを率い出すことができなくなることがあります。相手の話を聴くときは前述の「3つのない」を心掛け、相手の話をそのまま受け止めることが重要です。

次に『自己管理』のスキルについてお話しします。話を聴くときは勿論、耳で聞きますが、その時に管理すべきものとして、『頭(思考)』、『心(感情)』、『体(体勢、体調)』、『時間』の4つが挙げられます。私も昔、管理職時代にこの『自己管理』で苦労したことがありました。それを繰り返していくうちに、考え出して実践したのが『15分ルール』でした。

これは一つの例ですが、ある時、私は1週間くらい出張をして帰ってきた翌朝、定時より1時間くらい早く出社し、報告書を作成していました。その報告書を半分くらい書き上げたところに、一人の部下が出社してきました。私は1週間出張していましたので、部下も色々相談をしたかったのでしょうか、顔を見るなり、「ちょっとお時間、宜しいでしょうか」と話しかけてきましたので、「15分だけ待ってくれる?」と提案しました。このようなことは以前もよくあり、初めの頃は私も自分の仕事を優先して「いつ相談を受けるか」ということも明示せずに受ける時期を15分と明示したことで部下も安心し提案を承諾してくれました。そこでまず行ったのが、『頭(思考)』の管理です。報告書を作成するために使用していた資料に印をつけ、部下との相談の後に、すぐに取り抱えるようにしました。次の行ったのが『心(感情)』の管理です。私もそれほどできた人間ではありませんので、「こっちは大事な報告書を作成しているのに、それが分からないのか?」という気持ちが湧いています。すぐに相談に乗ると、その気持ちが表情に出てしまうかもしれませんので、トイレに行って顔を洗うことでこの感情を抑えます。これらを行うことで約12分で、15分経った時から相談を始めたのです。相談するときは、正対すると緊張感が高まることがありますので、横に座るなど『体(体勢)』の管理をします。そして、相談を始める前に、必ず所要時間を決めて置き、延長する場合も時間を決める「時間」の管理を行いました。

最後に確認のスキルです。確認すべきものは『過去』、『現在』、『未来』一般的に特に問題解決について、話を聴く際、相手の過去に行ったことや現在の状態を聴くことが多くなります。これは問題解決のためには、事実の把握が重要であるからです。しかしながら、問題解決の事実確認は良くない内容が多く、しかも『過去』や『現在』は変えることはできないため、ネガティブな気持になってしまうことがあります。ただ、問題解決で重要なのはそれに対して今後どのようにしていく『未来』のことを確認していくことが重要です。『未来』は変えることができるため、ポジティブな姿勢を引き出すことができます。

今までは、相手の話を聴くために必要なスキルについてお話をしてきましたが、一般的に人の話は状況や自分以外の人の話が多く、自分の行動について話をする人は多くありません。

特に、問題が発生したときはその傾向が強くなります。そこで、次回は、相手が考えていることや行っている行動を引き出す『行動・思考ヒアリング法』について、お話ししたいと思います。

AHPコラム コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十三話

 

今までは他人の話を聴くために重要な要素についてお話をしてきました。初めにもお話ししましたように、「聞き上手は話し上手」と言うように、話を聴くことにより、相手の信頼を得ることが可能になります。場合によっては相手の話をよく聴くだけで相手の問題解決をサポートすることができます。ただ、話の内容が問題の対象となっている他人の話ばかりで、いわゆる愚痴になってしまうと問題解決に繋がることにはなりません。このようなときに必要なのは相手の行動の振り返りに繋がる話の聴き方です。そこで今回は、相手の行動の振り返りに繋がる『相手が考えていることや行っている行動』を引き出す話の聴き方、『行動・思考ヒアリング法』について、お話ししたいと思います。

このコラムのテーマは『コロナ下におけるコミュニケーション』です。オンラインによる部下の指導に際し、念頭に置くべきは「部下の育成は問題解決である」ということではないでしょうか?

問題解決には4つのステップがあります。ステップ1は「あるべき姿を描く」、つまり。部下にどのようになってほしいかということを明確にするということです。どうなってほしいかというのは、近未来的にものと少し中長期を見たものを両方が必要でしょう。そのあるべき姿に必要なスキル(知識、技能、コンピテンシー)とそのレベルを設定することが必要です。ステップ2は「現状を分析する」、つまり、ステップ1で明確にしたあるべき姿(のスキル)と現状の部下のスキルレベルのギャップは明確にすることで、このギャップは自分だけが認識するのではなく、部下と共有することが必須です。そうしなければ、部下は貴方が一生懸命指導しても、何故これをやらないといけないのか理解できないことがあるからです。次に、ステップ3ですが、「原因を追究する」、つまり、ギャップを生じている根本的原因を明確にすることです。ステップ4は「解決策を取る」、つまり、ステップ3で明確にした根本的原因を課題(しなければならないこと)に変換し、それを実行することです。この4つのステップのステップ2で必要になるのが、相手が業務にどのように対処しているか、その行動を明確にすることです。業務面談などで、部下の仕事の現状を聴くとき、よくあることは結果だけを聴いていることです。うまくいっていない場合、「何故うまくいっていないか」を訊くと最初に出てくるのは、状況、つまり仕事の環境であったり、それに関係する他人の話など、他責の要因であったりするのではないでしょうか?問題解決を行うためには他責の要因ではなく、自責の要因を見つけ出すことが重要であると言われています。これは本人にとって非常につらいことなので、話としては最後になってしまいます。何故なら、自分に起因する事象を話すと、それを叱責されることが多々あるからでしょう。ここで重要になるキーワードが昨今よく目にするようになった『心理的安定性』です。『心理関安定性』は、『恐れのない組織』(エミリー・Ⅽ・エドモントン氏著)によると、「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」を指します。心理的安全性とは、ただ、感じよくふるまうことには関係がなく、率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる環境のことであると言われています。この『心理的安定性』を確保するために、今までにお話ししてきた積極的傾聴法による傾聴が必須となります。積極的傾聴によって、確保された『心理的安定性』をベースとして、『行動・思考ヒアリング』を活用することで部下は安心して問題に繋がる自身の行動を包み隠さず話すことで、自身がどのような行動を取ることが問題解決に繋がるのかを気づくことができるのです。

次回は、『行動・思考ヒアリング法』の手法についてお話ししたいと思います。

AHPコラム コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十四話

 

今回は、相手に気づきを与えるために必須の『行動・思考ヒアリング法』の手法についてお話ししたいと思います。

メンバーからの相談において、アドバイスより先に行うべきことは相手のことを知ることです。これは、相手の問題解決に繋がるだけではなく、育成にもつながるものです。相手のことを知るためには、先にお話しした積極的傾聴法で傾聴することが必要ですが、その場合、相手はまず現状について話をすることが多いでしょう。現状とは、問題の状態やそれに関わる人たちの話であり、それに対して自分がどのように行動したかということはなかなか出てこないことが多いのではないでしょうか。しかしながら、問題の状態やそれに関わる人たちの行動などは『他責』の事象となります。問題がそのような状態になった理由やその問題に関わる人たちの行動を起因した自身の行動を見つけることが必要です。つまり、問題解決には自責の原因を突き止めることが重要ですが、普通の人にとって、自責の原因を突き止めることはかなりの難事です。そこで皆さんの引き出す力がカギとなります。そこで頼りになるのが『行動・思考ヒアリング法』です。『行動・思考ヒアリング法』は、コンピテンシーを測定する際に、相手が業務において成果を上げるために行ってきた行動を「どのように考え、どのように行動したか」を詳細に訊くことにより、相手が取った行動と思考のイメージを共有し、それを可能にしているコンピテンシーとレベルを明確にすることためのヒアリング法です。コンピテンシーは、ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、「自らの職務において高い成果を生み出すために、安定的に、行動として発揮できた能力」で、行動特性とも言われています。コンピテンシーは元々米国の外交官の採用の精度を上げるために開発されたものですが、その成果が認められ、その後、ビジネスの世界での採用に活用されています。コンピテンシーは『発揮能力』であり、測定の際に、相手が行った行動とそれに繋がる思考を引き出します。コンピテンシーは、採用だけではなく、人財抜擢や人材育成においても活用され、特に、人材育成においては、相手が発揮している能力とそのレベルを明確にした上で、それを相手にフィードバックし、求められるコンピテンシーのレベルとのギャップを双方で共有し、ギャップを埋めるための施策を実行していくことが重要です。その際に、相手が発揮している能力とそのレベルを明確にするために用いられるヒアリング法が『行動・思考ヒアリング法』です。

『行動・思考ヒアリング法』は3つのステップを踏んで行います。最初のステップは成果を確認することです。相手がどのような成果を上げるために行動を起こしたかということを明確にします。第2のステップは明確にした成果を上げるために、どのようなことをしたかということを訊き出します。例えば、営業であるお客様から受注をするために、どのようにしたかということを訊きます。その際、重要なのは、重要成功要因を抜け洩れなく訊き出すことです。また、この際はまだ詳細な行動を訊くのではなく、例えば、営業の場合ですと、相手の現状の把握など、ざっくりした内容を明確にし、それを時系列に整理し、抜け洩れがないことを確認します。最後のステップは、抜け洩れがないことを確認した重要成功要因について、具体的にどのようなことを行ったのか、またそれはどのように考えたのかを深堀することです。これを行うことで、相手の行動が走馬灯の如く、推測することができ、相手のコンピテンシーとそのレベルを測定することができますが、もう一つの効果があります。それは、相手が詳細に話すことによって、自身が行った行動を鮮明に思い出すことができることです。この話し合いに基づき、まず、相手がどのようにした方が良かったと考えるのかを聴いたうえでこちらの考えを述べ、相手の自主判断を引き出すことが可能になります。

次回は、『行動・思考ヒアリング法』の留意点についてお話ししたいと思います。

AHPコラム コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十五話

 

今回は、『行動・思考ヒアリング法』の留意点についてお話ししたいと思います。

基本は「どのように考え、どのように行動したか」を聴くことです。第十四話で話しましたように、人は何(What)について話したがります。これを拒否してはいけませんが、Whatを聴いた後に聞く必要があるのが、相手の思考と行動です。思考はWhy (どのように考えて)、行動はHowe(どのように行動したか)を聴くわけです。その際、相手に「自分の行動を経験談として話してもらい、何故そのようにしたのかがわからない部分やどのように行動したのか詳しく話されていない部分走馬灯のように想像できるまで深堀質問をしていきます。この会話において大切なことは、相手と議論をしたり、こちらの考え方や意見を伝えたりせず、あくまでも相手の話を聴くことです。また、漠然と話を聞くのではなく、どの場面について聴いているのかを明確にした上で、相手にそこでの言動を思い出してもらい、それを話してもらうことです。

このヒアリングで最初はスムーズに始めることができてもすぐに質問に詰まってしまうことがあります。その時は6W5Hを意識し、抜けていることを訊きます。6Wとは、誰が(Who)、誰に対して(と共に)(Whom)、何を(What)、いつ(When)、どこで(Where)、どのように考えて(Why)、5Hとは、どのようにして(How)、いくつ(How many)、幾ら(How much)、どのくらいの時間(How long)、どのくらいの距離(How far)です。5Hの後ろの4Hが事象を詳しくする際に、有効です。

この深堀質問で重要なのは、相手の言葉を繰り返すことです。また、出来る明け相手が言った言葉を使って質問するのが良いでしょう。勿論、◇相手が話している時は自分はしゃべらず、相手が持論を話し始めたら、その具体的な行動を訊いて下さい。

前述の留意点を意識して行動・思考ヒアリングを行うことで、相手がどのように考えて行動したのか理解できると共に、訊かれている相手もその時の自身の行動と思考を思い出し、問題解決のきっかけに気づくことがよくあるのです。

次回は、モチベーションマネジメントに繋がるコミュニケーションについてお話しします。

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