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ビジネスコラム: サービス
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コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十六話

今回は、モチベーションマネジメントに繋がるコミュニケーションについてお話ししたいと

思います。

人はどのようなときにモチベーションが上がるのでしょうか?モチベーションが上がることを、通常、『やる気になる』と申しますが、私は『その気になる』と言っています。

冒頭の質問を投げかけると、帰ってくる答えとしては、「難しい仕事を任されたとき」、「やることのメリットを理解できたとき」、「仕事の意義を感じた時」、「ほめられたとき」、「仕事をやり遂げたとき」、「給料が上がったとき」等があります。

モチベーションに繋がる言葉で『意欲』という言葉がありますが、意欲の3要素としては、方向性、覚醒、持続があります。『方向性』は、意欲がどちらの方に向いているかということで、『目的』や『目標』が

それに影響を与えます。

『覚醒』は意欲が発生する開始段階で、『持続』は意欲が持続する『中間段階』です。

上述した答えを3つに分類してみると、開始段階としては「難しい仕事を任されたとき」、「やることのメリットを理解できたとき」、「仕事の意義を感じた時」、中途段階は、「やることのメリットを理解できたとき」、「仕事の意義を感じた時」、「ほめられたとき」、終了段階は「ほめられたとき」、「仕事をやり遂げたとき」、「給料が上がったとき」になります。

また、意欲に就きましては、2つの意欲付けがあり、その一つが『他律的意欲付け』、もう一つが『自律的意欲付け』です。

『他律的意欲付け』は『外発的意欲付け』とも言い、外からの行動などにより意欲が発生するもので、『規則や規定』、『人事・報酬制度』、『リーダーの指示や期待』、『職場内の規範』が挙げられます。

例えば、『職場内の規範』としては、時間厳守が求められる工場(もちろん会社によって差がありますが)の勤務者の方々の研修では、全員が時間よりかなり早く席についており、その理由を訊くと「それは当たり前でしょう」という答えが返ってきます。また、カイゼンが求められる会社に一時的に勤務した人にお話を聴いた際、かなり頻繁に改善提案を出していたというので、「それは以前もそうでしたか?」と尋ねたところ、「以前は副住職をしており、そんなことはしたこともなかったが、その会社に入って仕事をしていると、改善提案をしなければならないという気持ちになった」との回答を頂きました。

これは『職場の規範』として、時間厳守や頻繁な改善提案が当たり前になっているため、そうすることに対するモチベーションが常に維持されていることを表しています。

その意味で組織風土の改革はモチベーションマネジメントにとって重要なことであると言えます。

ただ、他律的意欲付けは外からのものなので、それがなくなるとモチベーションを駆り立てるものがなくなってしまいますので、これだけでは不十分です。

そこで大切になるのが『自律的意欲付け』です。

『自律的意欲付け』は『内発的意欲付け』とも言い、『肯定的な自己評価』、『自己効力感』、『指し手意識』、『高水準な自己基準を持つ』などが挙げられます。

この中の『指し手意識』は自身を主人公として考えることで、例えば、仕事の一切を任せられることなどにより、強い『指し手意識』が芽生え、言われたことをやるだけの受け身の仕事姿勢ではなく、言われなくても自分で色々考えて積極的に進めていく能動的な仕事姿勢を生み出すことにも繋がることが多々あります。

また、『高水準な自己基準を持つ』ということは、その人が自身としてこれ以上できて当たり前です。

人は常に称賛されることを望んでいるわけではありません。自身として称賛してほしいレベルを持っており、そのレベルを知って称賛することで真のモチベーション向上に繋がります。ただ、今までお話ししてきたことは原則論で、モチベーションに影響は与えるものは人によって異なります。

次回は、人によって異なるモチベーションの要因を詳しくお話しします。

コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十七話

今回は、人によって異なるモチベーションの要因を詳しくお話ししたいと思います。

人によって異なるモチベーションの要因を理解するためには、相手を理解することが

必要でそのためには次の4つの視点が挙げられます。

1.エゴグラム、

2.LABプロファイリング、

3.マズローの欲求5段階、

4.文化の見取り図を作る八つの指標

 エゴグラムは交流分析で用いられる人間性の指標の一つです。

人の人間性は、大きくParent、Adult、Childに分けられ、ParentにCritical Parent(以下CP)とNurturing Parent(以下NP)に、Childは、Free Child(以下FC)とAdapted Child(以下AP)が分けられます。

これらの5つの性格はどれか一つだけを有しているのではなく、5つとも有していますが、その割合が人によって異なります。よって、まず自分のエゴグラムがどのようなものであるかを理解した上で、相手のエゴグラムを理解し、相手にあった働きかけをすることが肝要です。

 次にLabプロファイリングについてお話ししたいと思います。

Labプロファイリングは、『「影響言語」で人を動かす』という書籍でシェリー・ローズ・シャーベイ氏が提唱する他人を動機付ける要因で、『動機付けの特徴』として、方向性、価値基準、判断基準、選択理由、変化・相違対応があり、『行動上の特徴』として、スコープ、関係性、

ストレス反応、連携、システム、ルール、知覚チャンネル、納得モードが

あります。

例えば、方向性は、目的志向型と問題指向型に分けられるので、相手の言動をよく観察することで、どちらの型なのかを理解し、それにあった対応をすることで、相手を動機付けることができる可能性が強くなります。

 マズローの欲求5段階に就きましては、ご存じの方も多いと思いますが、5つの段階として、基本的欲求、安全欲求、社会的欲求、尊厳欲求、自己実現欲求があり、低い欲求が満たされることで、次の欲求が芽生えると言われています。

基本的欲求は食べる、飲む、眠る、排泄するなど動物としての基本的な欲求でこれを制限する行為は拷問などであり、拷問することで相手を意のままにする例が挙げられます。

安全欲求から上の欲求は、退職要因でも説明ができます。危険な仕事は安全欲求を満たすことができず、人間関係がうまくいかない場合は社会的欲求が満たされません。評価が良くないと尊厳欲求に抵触し、自分のやりたい仕事が出来ないと自己実現欲求が満たされないということになります。

このような場合、相手を説得して、退職を思いとどまらせるためには、相手の欲求段階の正確な把握が必要になります。

 最後に、文化の見取り図をつくる八つの指標についてお話しします。

この指標は、フランスとシンガポールに拠点を置くビジネススクールINSEADの客員教授のイアン・メイヤー氏が提唱する異文化理解の以下の8つ指標です。

1.コミュニケーション、2.評価、3.説得、4.リード、5.決断、6.信頼、7.見解の相違、8.スケジューリング

異文化というと、外国を想起することが多いと思いますが、国内でも、いや、組織でも文化は異なります。

それらの異なる文化を前述の8つの指標に含まれる要因で分別し、相手に合った対応をする必要があるというものです。

例えば、コミュニケーションとして、ハイコンテクストとローコンテクストのコミュニケーションがあります。ハイコンテクストなコミュニケーションにおいては、良いコミュニケーションとは繊細で、含みがあり、多層的なもので、メッセージは行間で伝え、行間で受け取る、ほのめかして伝えられることが多く、はっきりと口にすることが少ないものです。

一方、ローコンテクストな良いコミュニケーションとは厳密で、シンプルで、明確なもので、メッセージは額面通りに伝え、コミュニケーションを明確にするためならば繰り返しも歓迎されるというものです。

ざっくりお話しすると、ハイコンテクストなコミュニケーションは、地方のような同じ文化で

長年一緒に生活してきた人たちの間におけるコミュニケーションで、「一を言えば十を知る」

コミュニケーションであるのに対し、ローコンテクストなコミュニケーションは大都市のようないろいろな文化を有した様々な人たちの間で使われるもので、十を伝えるためにはできる限り明確に(理由も含めて)話すコミュニケーションということができるでしょう。

評価以下の7つについても同様に基準があり、相手の言動から相手が各々の指標のどの基準に属するのかを知ることで、このように言えば相手は納得するという切り口を見つけることができます。

 相手を理解する視点はこれだけではありませんが、この4つの視点から相手を観察してみると、それまで理解が難しかったものが急に明確になることが多いかと思います。

次回は今までにお話しした相手を動機付けるために必要な考え方と行動をまとめてみたいと考えます。

AHPコラム コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十八話

 

コミュニケーションは大きな変化を遂げています。私が社会人になったころは阿吽の呼吸で相手の言わんとしていることを感じ取ることが求められていました。それが今では明確なコミュニケーションが求められるようになっています。まさにハイコンテクストのコミュニケーションからローコミュニケーションへの転換です。これは、日本の社会のグローバル化が進んだことが原因と考えられます。グローバル化というと、海外でのことを考えがちですが、国内においても皆が同じ文化ではありません。地域によっても組織によっても文化が異なり、異文化理解の意識を持つことが求められています。加えて、新型コロナの影響で対面によるコミュニケーションが制限され、オンラインによるコミュニケーションの機会が多くなりました。従来は、対面のコミュニケーションにおいて五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)によって相手を理解していたと思いますが、オンラインのコミュニケーションでは、聴覚と視覚の2つで相互理解することが必要となり、今まで以上にレベルの高いコミュニケーションが必要になります。

そのような中、仕事に対するモチベーションを高めるためには、仕事にまつわるものに価値を感じさせるこが重要です。この場合、仕事にまつわるものとは、一つは仕事そのものであり、もう一つは上司となります。

仕事そのものに価値を感じさせるには、方向性の明確化と働きがいのある職場環境の整備が必須であり、方向性の明確化には、仕事の意義をわかりやすく説明することが必要であり、働きがいのある職場環境を整備するためには、公正で明確な評価、役割・責任の明確化や自由裁量と責任の明確化が重要であり、共にこれらをメンバーに明確に話し、動機付けるコミュニケーション能力が求められます。

私たちは他人から働きかけを受けると、それを理解しますが、理解するためには筋道が通っていることが必要です。この際に必要なのが論理的コミュニケーションです。そして、それを納得するためには、信頼が必要となりますが、その際に必要となるのが、情感的コミュニケーションです。

2020年の東京オリンピックの誘致にあたり、日本のプレゼンテーションを指南したプレゼンテーションの第一人者の1人であるニック・バリー氏は、「他人を動機付けるためには、2つの理が必要である。その2つの理とは、論理と心理で、論理は必要だが、心理がなければ論理は死んでしまう」と言っています。これは、話し方や話している態度によっては、正しいことを話していても相手の納得を得られないことが多々あることを指しています。例えば、上からの目線の話し方であったり、態度、潜在的な抵抗のポーズと言われる腕組みをして話したりしていることが挙げられます。

部下が価値を感じる上司の特徴としては、チームで成果を上げていること、部下の能力を引き出していること、部下の成果と努力を認めてくれるとしてはこと、話をよく聴いてくれるが挙げられます。よって冒頭でお話ししました仕事にまつわるものとしての上司に価値を感じてもらうためには、高いコミュニケーション能力が必要ということができます。

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コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第十九話

 本コラムに就きましては、リーダーの役割をマネジメントとリーダーシップと捉えて、マネジメントとの機能で重要なメンバーを巻き込んだPDCAの回し方と自他の育成、これに加えてモチベーションマネジメントにおけるコミュニケーションの考え方とその方法についてお話ししてきました。

 ここにもう一つ“ファシリテーション”という考え方を加えてみたいと思います。マネジメントは組織の効率を上げるためのものであり、リーダーシップはビジョンを定め、それに必要な創造や変革を導くもので、今まではこの2つをうまく使いこなすことで、かなりの成果を上げる事ができました。

しかしながら、経営環境は非常に複雑になり、一部の人間だけで組織を率いていくのは困難な状況になっています。

マネジメント(How/計画)、つまり、「どのようにそれを進めていくのか」、リーダーシップ(What/ビジョン・戦略)、つまり、「何をする」ということを指示するだけではなく、ファシリテーション(Why/意味)、つまり、何故これをするのかを問いかけてメンバーに考えてもらい、自律的に

動くようにすることが必要になってきているのではないでしょうか?

ファシリテーションというと、会議をスムーズに進める手法と考えられている節が多いと感じます。

確かにファシリテーションのFacilitateは促進する、容易にするという意味ですから、その一面はあります。

しかし、ファシリテーションは、単に会議を促進するだけのツールではなく、そこに参加する全てのメンバーに行動の意味を問いかけることにより、何故そのような行動を取らないといけないのかということを考えてもらうことで、他人に言われなくても行動する、つまり自律的行動がとれるようにする機能であることを理解していただきたいと思います。

次回はファシリテーションに用いられる4つのスキルについてお話ししたいと思います。

コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第二十話

今回はファシリテーションに用いられる4つのスキルについてお話ししたいと思います。

4つのスキルとは、①場をデザインするスキル、②対人のスキル、③構造化のスキル、④合意形成のスキルです。

場をデザインするスキルは、話しやすい雰囲気を醸成する、つまり、チームの活動が最大限発揮されるよう段取りをしたり、チームづくりから活動プロセスのデザインまで、チームの活動の枠組みを設計したりすることができるスキルです。このベースには積極的傾聴法をお話しした際に、触れた『心理的安定性』が大きくかかわってきます。そのために、次に5つのポイントを押さえることが必要になります。第1として、何を目的として活動するのか、話合うのか、その目的を明確化し、メンバーに徹底させ、第2として、何を目標として今回のミーティングを行うのか、その目標を明確化し、メンバーにあらかじめ周知させます。そして、第3として、目標に到達するためのロードマップ、つまり、どのような手順、時間で進行していくのか、その中にどのような要素を入れて行うのか、などのスケジュールを作成します。そして、第4として、参加メンバーはどのような人にするのか、また、ファシリテーターや書記、意思決定者など役割を明確化しておきます。そして第5として、ミーティングを行うにあたり、どのようなルールと方針で行うのかを決めておくことです。第5の中には、他者の意見を否定しないなどが入ることが必要で、これが心理的安定性を確保することになり、人は責任を持って自分を少数意見であったとしても、自分の意見を述べることができるようになります。ファシリテーターはこの5つのポイントが担保できるようにすることが重要になります。

対人関係のスキルは、様々な意見を引き出す、つまり、発散的議論を促すスキルです。これに就きましては、積極的傾聴法でその大半をお話致しました『傾聴』と『質問』によって、多種多様な多くの意見を引き出すことが重要になります。

構造化のスキルは、出てきた意見を整理する、つまり、収束的議論を促進するスキルです。発散的議論により多種多様な多くに意見が出ても、それだけでは問題解決にはなりません。出てきた意見をきちんと構造化し、抜け洩れない状態にした上で、意見間の因果関係を明確にすることが必要になります。そのためには論理的思考が必要となり、論理の3点セット(論拠、根拠、結論)の繋がりを押さえることで、一見ばらばらに見える多種多様の意見を一つの方向にまとめることができます。

合意形成のスキルは、様々な案を一つにまとめる、つまり、コミットメントを形成するスキルです。

構造化のスキルで形成された結論は複数になることもあります。そのようなとき、合理的な評価基準を用いて意思決定したり、全員で合意するアイデアをみんなでつくりあげるコンセンサス法を用いたりすることが重要となります。

これらの4つのスキルは流れとも考えられます。つまり、話しやすい雰囲気を醸成することにより、発散的議論を促進し、論理的思考に基づいて収束的議論により結論を出し、複数の結論を一つにまとめるという流れです。

ファシリテーションはこの流れを見ると、確かに会議をうまく進める手法とも言えますが、それはファシリテーターが全てをコントロールするのではなく、全てのメンバーから自主的に考えさせ、それを言語化させるという組織の自律化促進の手法であると考えることができます。

AHPコラム コロナ禍におけるコミュニケーションを考える 第二十一話

今まで20回に亘り、聴くコミュニケーションを中心としてお話しして参りました。

「聞き上手は話し上手」と申します。話を聴いてあげるだけで問題が解決することもあります。

特にコロナ下では対面で話すことが出来ないことも増えてきているため、対面によるコミュニケーションでは視覚と聴覚を含む5感で理解できていたものが、視覚と聴覚の2感だけしか使えなくなったため、理解が難しくなっていることもあります。

また、無意識に放った言葉やボディランゲージが相手に対して与えた圧力により、心理的安定性が確保できず、相手の本当の気持ちを引き出せず、それが仕事の進め方に様々な影響を与えていることも多いと言われています。

職位の上の人の何気ない一言が職位の下の人に大きな影響を与えることを自覚しすることが大切です。かといって、何も話せなくなると益々相互理解ができなくなります。まずは、相互信頼を醸成するために、お互いをリスペクトして、話を聴くところから始めてみるのが良いのではないでしょうか。

コミュニケーションに係るコンピテンシーは、対人影響力、対人理解力と顧客志向力です。このうち顧客志向力はむしろ心の持ち方です。対人理解力の高いレベルを発揮することにより、『心で聴き』と共に『口で訊き』、相手の気持ちを理解した上で、相手に響くことを話すことで、仕事をスムーズに進めることが出来るものと考えています。

私のお話をこれで終わりです。長きにわたりご愛読下さりありがとうございます。

次回からは、以前に掲載しましたコンピテンシーコラムを整理したものを掲載します。

お楽しみに。

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