top of page
  • 靖 伊藤

AHPコンピテンシーコラム第89話

日常で気がついたコンピテンシー。 今回からは相手をその気にさせるモチベーションアップに繋がるコンピテンシーのお話の続きです。

前回は「心理」についてお話をしましたので、今回は「論理」について、お話をしたいと思います。相手をその気にさせる為には、先ずに信頼が必要で、信頼を得るために傾聴が非常に有効である事をお話しました。しかしながら、ただ聴いているだけでは問題の解決になりません。聴き尽くした後は、聴いた内容を整理して問題解決を支援することが更に信頼を深めることになります。

ここで重要になってくるのは、聴き方です。「きく」には3つの「きく」があると言われます。先ず、「耳できく」でこの場合は「聞く」という字を用いますが、何とはなしに聞いている状態を指します。次に「口できく」があり、これは「訊く」という字を用います。「訊く」というと「訊問」が頭に浮かび、警察などで行われる訊問を連想しがちですが、ここで「訊く」というのは相手の事に興味を持ち、引き出すという意味を持っています。これは「質問」に繋がります。良い質問は相手から良い情報を引き出し、良い関係を醸成しますが、悪い質問は逆の結果を生み出します。そして、もう一つのきくは「心で聴く」です。「聴く」は読んで字の度如く、耳に目と心を足すと書きます。相手から引き出した内容を、五感の全てを用いて、きちんと理解し、共感することで、信頼への第一歩を踏み出す事ができるのです。

このように、「きく」においては、質問法が非常に大切な役割を持っています。元々、質問には5つの目的と7つの方法があると言われています。5つの目的とは、「疑問」「確認」「意見・提案」「動機付け」「潤滑油」、そして、7つの方法とは、「拡大質問」「深堀質問」「限定質問」「選択質問」「誘導質問」「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」です。この5つの目的のうち、「疑問」「確認」は「相手を理解する」コミュニケーション、即ち、傾聴・共感型コミュニケーションの、そして、「意見・提案」「動機付け」「潤滑油」は「相手に自分を理解してもらう」コミュニケーション、即ち、指示・説得型コミュニケーションの目的です。今回は傾聴・共感型コミュニケーションに関する質問法について、お話します。

先ず、「疑問」は白紙の状態から相手の事を知ろうとする質問で、方法としては、「拡大質問」が有効です。拡大質問とは、5W1Hを用いた質問で、相手に話す主導権を渡した質問法です。一方、「確認」は自分の考えていることと相手が考えている事が同じかどうかを確かめるもので、方法としては、主に「限定質問」が用いられます。「限定質問」は、「はい」「いいえ」で答えられる質問で、主導権は訊き手が持つことになります。限定質問を多用しすぎると、相手は受動的になり、場合によってはこちらの顔色を見ながら、答える危険性がある為、正確な情報を得ることができない事もあります。一方、「拡大質問」は相手の頭を活性化させる効用があり、潜在意識の中にある情報を引き出す事ができます。但し、口下手な人に対して、「拡大質問」だけで進めると、相手が答えられずにいっぱいいっぱいになってしまい、嫌悪感を持たせてしまうこともありますので、「拡大質問」と「限定質問」をバランスよく、使っていくことが重要なのです。

次回は質問法の続きをお話します。

閲覧数:0回0件のコメント

最新記事

すべて表示

AHPコンピテンシーコラム第93話

日常で気がついたコンピテンシー。 ここ数回にわたり、相手をその気にさせる、つまり、モチベーションアップのコミュニケーションについて、対人理解能力(相手を理解する共感・傾聴型コミュニケーション)と対人影響能力(相手に理解してもらう指示・説得型コミュニケーション)の2つのコンピテンシーの観点でお話をしてきました。相手をその気にさせるコミュニケーションは人財マネジメントの様々な局面で大きな力を発揮します

AHPコンピテンシーコラム第92話

日常で気がついたコンピテンシー。 今回は論理構成をまとめる上で、重要な点をもう少し詳しくお話したいと思います。 人をその気にさせる為には、聞いていて「なるほど」と思わせる事が必要です。話し手の話の内容がある点だけに偏っていると、「それ以外の事を考えなくてもいいの?」と不安になります。 このように「考えや議論を進める上での筋道、思考や議論の組み立てに基づいて考え、明確な筋道を立てて考えること。」を論

AHPコンピテンシーコラム第91話

日常で気がついたコンピテンシー。今回は指示・説得型コミュニケーションの論理構成についてお話します。 セミナーや研修で、「人前で話をするのが苦手な人はどれくらいいますか?」という質問をすると、半数以上の人が手を挙げます。その人たちによると「何を話してよいか分からず、事前に原稿を書くとそれを棒読みにしてしまったり、頭が真っ白になってしまったりする」ということです。確かに、私も原稿を書くと、それを完璧に

bottom of page